スウェーデン・ミステリー作家列伝
スウェーデンの有名な輸出品は何でしょう?イケアの家具、ボルボやサーブの車、木材・・・忘れてならないのはミステリー小説。スウェーデンは、全世界で読まれるミステリーの重要な供給元なのです。自称、「スウェーデン犯罪小説に関する日本人オーソリティー」である私が、その作家、作品の魅力、背景を紹介します。
スウェーデンには「推理作家アカデミー」という組織があり、毎年、最優秀賞を選んでいます。その歴代の受賞者を順番にカバーし、次に、賞は取っていないけれど、重要な作家とその作品を紹介します。
スウェーデン推理作家アカデミー賞受賞者
(1982年以降)
1982年:
受賞者:リーフ・G・W・ペルソン(Leif G. W. Persson)
受賞作:Samhällsbärarna (社会の担い手)
1983年:
受賞者:ウルフ・ドゥルリング(Ulf Durling)
受賞作:Lugnet efter stormen (嵐の後の静けさ)
1984年:
受賞者:スタファン・ヴェステルルンド(Staffan Westerlund)
受賞作:Svärtornas år (十八歳の年)
1985年:
受賞者:ジーン・ボリンダー(Jean Bolinder)
受賞作:För älskarns och mördarns skull (愛と愛のために)
1986年:
受賞者:スタファン・ヴェステルルンド(Staffan Westerlund)
受賞作:Större än sanningen (真実よりも大きなもの)
1987年:
受賞者:オロフ・スヴェデリド(Olov Svedelid)
受賞作:Barnarov (誘拐)
1988 年:
受賞者:ヤン・ギィユー(Jan Guillou)
受賞作:I nationens intresse (国家のために)
1989年:
受賞者:シェル=ウーロフ・ボーネマルク(Kjell-Olof Bornemark)
受賞作:Skyldig utan skuld (罪なき無罪)
1990年:
受賞者:ジーン・ボリンダー(Jean Bolinder)
受賞作:Dödisgropen (停滞氷群)
1991年:
受賞者:ヘニング・マンケル(Henning Mankell)
受賞作:「顔のない殺人者」(Mördare utan ansikte)
1992年:
受賞者:イェスタ・ウネフェルド(Gösta Unefäldt)
受賞作:Polisen och mordet i stadshuset (警察と市役所の殺人)
1993年:
受賞者:シャスティン・エークマン(Kerstin Ekman)
受賞作:Händelser vid vatten(水のイベント)
1994年:
受賞者:ホーカン・ネッセル(Håkan Nesser)
受賞作:「終止符ピリオド」Borkmanns punkt (ボルクマンの定理)
1995年:
受賞者:ヘニング・マンケルHenning Mankell
受賞作:「目くらましの道」(Villospår/道を外れて)
1996 年:
受賞者:ホーカン・ネッセル(Håkan Nesser)
受賞作:Kvinna med födelsemärke (痣のある女性)
1997 年:
受賞者:オーケ・エドヴァルドソン(Åke Edwardson)
受賞作:Dans med en ängel (天使とのダンス)
1998年:
受賞者:インゲル・フリマンソン(Inger Frimansson)
受賞作:「グッドナイト マイ・ダーリン 悪女ジュスティーヌI」(God natt min älskade)
1999年:
受賞者:スヴェン・ヴェステルベリ(Sven Westerberg)
受賞作:Guds fruktansvärda frånvaro (神の恐ろしい不在)
2000年:
受賞者:アイノ・トロセル(Aino Trosell)
受賞作:Om hjärtat ännu slår (心臓の打つ限り)
2001年:
受賞者:オーケ・エドヴァルドソン(Åke Edwardson)
受賞作:Himlen är en plats på jorden(天国は地上にある)
2002年:
受賞者:シェル・エリクソン(Kjell Eriksson)
受賞作:「ブルンジの王女」(Prinsessan av Burundi)
2003 年:
受賞者:リーフ・G・W・ペルソン(Leif G. W. Persson)
受賞作:En annan tid, ett annat liv (別の時間、別の人生)
2004年:
受賞者:オーサ・ラーソン(Åsa Larsson)
受賞作:「赤い夏の日」(Det blod som spillts/流された血)
2005 年:
受賞者:インゲル・フリマンソン(Inger Frimansson)
受賞作:「シャドー・イン・ザ・ウォーター 悪女ジュスティーヌII」(Skuggan i vattnet/水の中の影)
2006年:
受賞者:スティーグ・ラーソン(Stieg Larsson)
受賞作:「火と戯れる女」(Flickan som lekte med elden)
2007年:
受賞者:ホーカン・ネッセル(Håkan Nesser)
受賞作:En helt annan historia (全く別の話)
2008年:
受賞者:ヨハン・テオリン (Johan Theorin)
受賞作:「冬の灯台が語るとき」(Nattfåk/冬の嵐)
2009 年:
受賞者:アンデシュ・ルースルンド/ベリエ・ヘルストレム(Anders Roslund & Börge Hellström)
受賞作:「三秒間の死角」(Tre sekunder/三秒)
2010年:
受賞者:リーフ・G・W・ペルソン(Leif G. W. Persson)
受賞作:Den döende detektiven (瀕死の刑事)
2011年:
受賞者:アルネ・ダール(Arne Dahl)
受賞作:Viskleken(ささやき)
2012年:
受賞者:オーサ・ラーソン(Åsa Larsson)
受賞作:Till offer åt Molok (モロクの犠牲)
2013年:
受賞者:クリストファー・カールソン(Christoffer Carlsson)
受賞作:Den osynlige mannen från Salem (サレムから来た見えない男)
2014年:
受賞者:トーヴェ・アルステルダール(Tove Alsterdal)
受賞作:Låt mig ta din hand(手を取って)
2015 年:
受賞者:アンデシュ・デ・ラ・モッツ(Anders de la Motte)
受賞作:Ultimatum(最後通牒)
2016 年:
受賞者:マリン・ペルソン・ギオリト(Malin Persson Giolito)
受賞作:Störst av allt (何よりも)
2017年:
受賞者:カミラ・グレーベ(Camilla Grebe)
受賞作:Husdjuret (ペット)
その他の注目されるべき作家
l マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー (Maj Sjöwall /Per Wahlöö)
l カミラ・レックバリ (Camila Läckberg)
l ヘレネ・トゥルステン (Helene Tursten)
l リザ・マークルンド (Liza Marklund)
l マリ・ユングステッド (Mari Jungstedt)
l トマス・カンガー (Thomas Kanger)
l イェンス・ラピドゥス (Jens Lapidus)
l ラーシュ・ケプレル (Lars Kepler)
l クリスティーナ・オルソン (Kristina Ohlsson)
l ミカエル・ヒョルト/ハンス・ローゼンフェルド (Michael Hjorth / Hans Rosenfeldt)
スウェーデンでは、毎年百人以上の犯罪小説作家がデビューしているそうです。過去四十年でその総数は数千人になると思います。その中で、三十六人を選んで評論しました。誰にするのか、正直苦慮しましたが、その年の作品賞を貰っている作家を選ぶということで、それほど偏ってはいないと思っています。また、その他の作家に関しては、英語、ドイツ語の北欧犯罪小説の評論本五冊の中で、比較的多くのページを割いて述べられている作家を選びました。英語、ドイツ語では「北欧のミステリーガイド」が数冊あるのですが、日本語では見たことがありません。この駄文が、「北欧のミステリー」に興味をお持ちの方の参考、指標になれば幸いです。
(2020年5月)
著者紹介:
川合元博(かわい もとひろ)。京都市出身。金沢大学大学院ドイツ文学科修士課程修了。1984年よりドイツ、英国で暮らす。SE、プロジェクトマネージャーとして、複数の日本企業の情報システム部に永年勤務。2000年頃から、数えきれない出張と、単身赴任の際の時間つぶしに、北欧のミステリーを読み始める。以来20年、北欧のミステリーの研究がライフワークになった感が。2018年、情報システム関係の職を退き、現在は日本語教師、翻訳業。そして、北欧のミステリーを読む毎日!