オロフ・スヴェデリド
Olov Svedelid
(1932年〜2008年)
ストックホルム出身、作家
スウェーデンの本の紹介サイト「Funderingar」のスヴェドリドのページより。
この人も多作である。生涯で百九十冊の本を出版している。そして、そのほぼ全てが、英語やドイツ語など、他国の多くの読者を期待で言語に翻訳されることがなかった。しかし、スヴェデリドのこれまでの犯罪小説作者と異なる点は、彼の書いたシリーズが映画やテレビ番組になったことである。昨今では、ベストセラーになった小説の映像化権が争われ、高額で取引されている。その意味では、小説の映像化という道に先鞭を付けた作家と言えるだろう。残念ながら、英訳はされておらず、ドイツ語で二冊読めるだけである。従って、ウィキペディアによる作者紹介も、スウェーデン語とドイツ語しかない。それを引用させていただく。
「スウェーデンの作家であるオロフ・スヴェデリドは、一九三二年八月二十六日ストックホルムのクングスホルメン(Kungsholmen)で生まれ、二〇〇八年九月二十二日、ストックスンド(Stocksund)で亡くなった。彼はヴェルムランド(Värmland)出身の大工、アンデルス・アルフレドソン(Anders Alfredsson)の息子である。彼は一九五四年にエリ・ビョルケン(Elli Björkén)と結婚し、二人の子供を設けた。
スヴェデリドの刑事ロランド・ハッセル(Roland Hassel)を主人公にした探偵小説は人気を博し、その多くが映画化された。それらの小説は、ハードボイルドな要素を持っている。また、スヴェデリドはリーフ・シルベルスキー(Leif Silbersky)と共著で、中年の弁護士サムエル・ローゼンバウム(Samuel Rosenbaum)を主人公とした法廷物も書いている。また、その他にも、ウルフ・アデルソーン(Ulf Adelsohn)など、別の作家との共著も多い。また、彼は、子供向けの本、歴史物も書き、劇団も主宰している。
当初スヴェデリドは、純文学の作家を志した。しかし、いくつもの出版社に断られた後、妻の勧めもあって探偵小説に転向。それで、大きな成功を収めた。彼は、スウェーデン犯罪捜査協会の会長も歴任している。」(1)
以上がスウェーデン語である。彼の書いた本のおよそ半分弱が、「ロランド・ハッセル」(二十九冊)シリーズと、「サムエル・ローゼンバウム」(二十二冊)シリーズである。ドイツ語での紹介は、映像化にもう少し言及している。
「(生年月日等は、スウェーデン語と同じなので省略)オロフ・スヴェデリドは若いころから執筆活動を始めた。一九六四年に彼は最初の本を出版、その後は、探偵小説、警察小説だけではなく、歴史小説、風刺、伝記、青少年向けの本、新聞記事なども手掛けている。彼は約百九十冊の本を書いたが、一九七二年に書き始めた刑事ロランド・ハッセルを主人公とした二十数冊のシリーズが広い人気を得て、その多くが映画化され、ラース・エリック・ベレネット(Lars-Erik Berenett)が主人公を演じた。スヴェデリドはその他にも、ラジオ、テレビ、映画、演劇でも活動した。彼は小説「誘拐」で一九八七年に『スウェーデン犯罪小説作家アカデミー賞』を受賞。二〇〇七年には、同アカデミーは長年の功績を称え、彼に『グランドマスター』の称号を授与している。
スヴェデリドは生涯、故郷であるストックホルムを愛した。かれは二〇〇八年に長い闘病生活の末七十六歳で亡くなった。亡くなる同じ年の五月、ガンとの闘病を綴った自叙伝的な『Riden av maran, besatt av demoner, helad av änglar(マランの騎乗、悪魔に取りつかれ、天使に癒された)』を発表している。」(2)
ドイツ語では、「ロランド・ハッセル」シリーズの映画化について述べられている。同シリーズのうち十二作が映画化された他、二〇一七年から二〇一八年まで、スウェーデンで作られたテレビでのシリーズが放映されている。ドイツ語でそれが言及されているのは、おそらくその幾つかが、ドイツ国内で放映されたからだと思われる。テレビの新シリーズは予告編のみ見たが、結構暗いく、重々しい仕上がりになっていた。
「ロランド・ハッセル」シリーズだが、最初芽が出ずにいたとき、奥さんに勧められて書き始めたというエピソードも振るっている。「ストックホルムの警察を舞台にした犯罪小説」、どこかで聞いたことがある。一九七〇年代に出版されたシューヴァル/ヴァールーの「マルティン・ベック」シリーズである。カースティン・ベルグマン(Kerstin Bergman)はその著書の中で、スヴェデリドを、シューヴァル/ヴァールーによって開かれた「警察小説」に触発され、その伝統を受け継ぐ作者の一人として挙げている。(3)残念ながら、あくまでシューヴァル/ヴァールーの項の追加として言及されているだけである。
これまで紹介した作家たちが、演出家、弁護士、教授などの副業であったのに対し、スヴェデリドは作家を主業とした人であった。
「ロランド・ハッセル」の映画で、主人公を演じた、ラース・エリック・ベレネット。スウェーデン放送協会のページより。
作品リスト:
弁護士サムエル・ローゼンバウム・シリーズ、リーフ・シベルスキー(Leif Silbersky)との共著
l Sista vittnet (最後の証人)1977年
l Straffspark (ペナルティーキック)1978年
l Bländverk (イリュージョン)1979年
l Målbrott (標的型犯罪)1980年
l Dödens barn (死の子供)1981年
l Dina dagar är räknade (あなたの日は数えられている)1982年
l Ont blod (邪悪な血)1983年
l Villfarelsen (妄想)1984年
l Villebrådet (採石場)1985年
l Bilden av ett mord (殺人のイメージ)1986年
l Narrspel (愚か者のゲーム)1988年
l Sprängstoff (爆発物)1989年
l En röst för döden (死の声)1990年
l Döden tar inga mutor (死者は賄賂を受け取らない)1992年
l Svart är dödens färg (黒は死の色)1993年
l Skrivet i blod (血で書かれた文字)1994年
l Den stora tystnaden (偉大なる沈黙)1995年
l Gå i döden (死にゆく)1996年
l Mördaren har inga vänner (死者に友達はいない)1998年
l Den sista lögnen (最後の嘘)2000年
l Upplösningen (解散)2002年
l Hämnden är aldrig rättvis (復讐は決してフェアではない)2006年
ロランド・ハッセル・シリーズ
l Anmäld försvunnen (1972)
l Svarta banken (黒い銀行)1973年
l Beskyddarna (庇護者)1974年
l Vapenhandlarna (武器商人)1975年
l Guds rötter (神のルーツ)1975年
l Slavhandlarna (奴隷商人)1979年
l Säkra papper (安全な紙)1980年
l Glitter (輝き)1981年
l Terrorns finger (恐怖の指)1982年
l Botgörarna (後悔)1983年
l Offren (被害者)1984年
l Barnarov (誘拐)1987年
l Gengångarna (幽霊)1988年
l De giriga (貪欲な彼ら)1989年
l Facklorna (トーチ)1990年
l Utpressarna (圧力)1991 ねん
l Plundrarna (略奪者)1992年
l Förgörarna (実行者のために)1993年
l Förfalskarna (偽造者)1994年
l Piraterna (海賊)1995年
l Dödens medicin (死の薬)1996年
l Domens dag (審判の日)1998年
l Dödens budbärare (死のメッセンジャー)1999年
l Rovriddarna (ロヴリダルナ)1999 ねん
l Hassel och jakten på lilla Mona (ハッセルと小さなモナ探し)2001年(短編集)
l Nödens handelsmän (苦痛の証人)2002年
l Främlingarna (エイリアン)2003年
l Hassel och Osiris hämnd (ハッセルとオシリスの復讐)2003年(短編集)
l Död i ruta ett (ボックスワンでの死)2004年
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(1) Wikipedia, the free encyclopedia, スウェーデン語版‘Olov Svedelid’の項より引用。
(2) Wikipedia, the free encyclopedia, ドイツ語版‘Olov Svedelid’の項より引用。
(3) Swedish Crime Fiction, The Making of Nordic Noir, by Kerstin Bergman, 2014, Mimesis International, Hythe, UK, 49ページ