コーヒーを煎る
焚火でコーヒーを煎る。左はミスター・コーヒーのアロイスさん。ずっと携帯で電話しながら歩いている忙しい人。
ルワンダが、そんな美味しいコーヒーの獲れる場所なら、地元の人々は美味しいコーヒーを毎日飲んでいるに違いないと思ってしまう。そんなこともあって、妻が滞在中、出会ったルワンダ人に、
「コーヒーを飲みますか。」
とよく聞いていた。しかし、九十パーセントの人が、
「お茶は飲むけど、コーヒーは飲まない。」
と答えた。つまり、ルワンダ人にとってコーヒーとは、輸出用、外貨獲得用の換金作物であり、自分たちで消費するものではないのである。
コーヒーツアーのメインイベントは、山の中でコーヒーを煎ること。僕たちの到着に合わせて、山の管理人らしきおじさんが、焚火を準備しておいてくれていた。その上に、素焼きの壷を乗せ、そこにコーヒー豆を入れて煎るのである。アロイスさんは火が完全に熾こり、壷が十分に熱くなるのを待った。そして、袋からとりだした緑色のコーヒー豆(彼はそれをグリーンビーンズと呼んだ)を入れ、木の枝でかき回し始めた。その後、妻と僕が交代でかき混ぜる。緑色だった豆がだんだん褐色になり、二十分後には濃い茶色になった。
「一つ食べてごらん。」
とアロイスさんに勧められて、豆を口に入れる。噛んでみると、香ばしい味が口に広がる。豆を飲み込んだ後も、その味と香りが口の中に残っていた。
「どうですか。」
とアロイスさんに聞かれ、
「口の中にずっと香りと味が残りますね。」
と答える。
「それをコーヒーのアフターテイストと言うんですよ。」
と彼は言った。煎られた豆は、ざるの上で冷やされ、十分後にまたアロイスさんが袋に仕舞った。
「『グリーンビーンズ』の状態で外国に輸出されます。輸入した国で煎られて、茶色い豆として販売されるんです。」
アロイスさんは言った。
そこから更に山を登り、頂上に達する。そこには白い岩が露出しており、そこからの眺望は特に素晴らしい。キガリの辺りに比べると少し丘が高く、緑に覆われた丘が、荒波が打ち寄せる波のように眼下に広がっていた。
山を降りた僕たちは、「ウォッシング・ステーション」と呼ばれるコーヒー豆の加工場に案内された。加工場は二百メートル四方ほどの広さで斜面に作られている。斜面の一番高いところに収穫されたサクランボのようなコーヒーの果実が集められる。近在の農家の人々が、袋を頭に乗せたり、自転車に乗せたりして運び込むのである。そこで、計量される。そこから樋のようなものを使って、下の機械に送られる、その機械で、柔らかい果肉の部分と硬い種の部分が分離され、果肉は横に吐き出され、種の部分だけが下へ送られる。下へ送られた種は、浴槽のような水の循環するタイル張りの場所で洗われる。だから「ウォッシング・ステーション」と呼ばれるわけ。洗われた種はベージュ色で、それが選別用のテーブルの上に広げられる。
コーヒー山の頂上からの展望は、今回の旅行で一番のものだった。本当にルワンダは美しい。