コーヒーの起源
コーヒー山の入り口にて。この看板の裏に、コーヒーの起源の漫画が描いてある。
「午前中のグループ」のひとり、中年の女性が妻と僕とGさんの軽登山靴を見て、
「あなたたち、その靴を履いていたら大丈夫よ。」
と言う。見ると彼らは殆どがペラペラの靴か、サンダル履きである。
ミスター・コーヒーと、僕たち三人は二時ごろに農場の事務所を出発した。ミスター・コーヒーの本名はアロイスさんという。
「アロイスさん、お昼ごはん食べないで大丈夫なんですか。」
と僕が聞く。彼は道端の店に入って行き、チョコレートバーを齧りながら出てきた。
「これが僕の昼ごはん。」
事務所の裏山を上がっていく。しばらくして彼は立ち止まり、近くにある木を指差して言った。
「これがコーヒーの実です。」
初めて見るコーヒーの木と実。高さ二メートル弱の木に、直径一センチほどの赤い実がなっている。身近なもので例えるならば、サクランボである。事実、アロイスさんはその実を指して「チェリー」という言葉を使った。
いよいよ、コーヒーツアーの説明が始まる。
「元々、コーヒーはエチオピアが原産地なんです。頃は十四世紀、エチオピアの高原で山羊を飼っている少年が、あるとき、自分の山羊が見知らぬ草と実を食べているのを見つけました。」
その夜、山羊は興奮して一晩中騒いでいたという。その後少年がその実を食べると、同じく、覚醒剤的な効果が出た。その噂が周囲に広まる。皆争ってその実を食べ始める。しかし、「お上」の考えることは昔も今も一緒。
「青少年に悪影響を及ぼすようなドラッグはまかりならん。」
というお達しが教会から出て、その実は廃棄されることになった。大部分は単に捨てられたが、一部は焼却処分になった。その焼けた実を食べてみると実に美味い。それをすりおろして煎じてみるともっと美味い。それがコーヒーの始まりであるという。嘘か本当かは分からないが。ともかく、コーヒーの原産地はエチオピアなのである。
「じゃあ、ケニアやルワンダはエチオピアの近くだから、そこから入ってきたのね。」
と思ってしまう。ところが、ぎっちょんちょん。エチオピアのコーヒーはイエメンに伝わり、そこからインドネシアに伝わった。その後太平洋を渡りブラジルなどで栽培されるようになって、そこからガーナ、ケニア、タンザニア、ルワンダでも栽培されるようになった。つまり、地球を一周するという長い道程を経てきたものであるという。
コーヒーの栽培には、気温、寒暖の差、標高、降水量などの結構厳しい条件があり、アフリカ大陸の高地は、これらの条件を備えているとのこと。
「コーヒーの品種にはふたつあるんですが、何だか知ってますか。」
というアロイスさんの質問に、Gさんは
「アラビカ種とロブスタ種です。」
と正しく答えた。彼は今日が二回目のツアーで、前回覚えたんだって。ルワンダのコーヒーはアラビカ種で、品質が良く、日本やヨーロッパにも輸出されている。
これがコーヒーの果実。生まれて初めて見た。チェリーと呼ばれるだけあって、サクランボにそっくり。