地下の住人

 

怪人はクリスティーンをオペラ座の地下にある不思議な世界へと連れて行く。

 

 この物語、フランスの作家ガストン・ルルー(Gaston Leroux)が一九〇九年に出版した同名の小説を基にしている。作曲は、「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「キャッツ」を手がけたアンドリュー・ロイド・ウェバー。僕はこのミュージカルを映画化したものを見ているので、ストーリーや登場する歌はほぼ知っている。

 しかし、凝りに凝った舞台である。「マンマ・ミーア」などは舞台装置も簡単で、観客のイマジネーションに訴えて場面転換を図っていることが多いが、「オペラ座の怪人」の舞台では、僅か数秒の暗転で、大道具が転換され、ガラリと別の場面になる。

「何と手際の良いこと。」

と感心する。そして、場面のひとつひとつの造りが、どれも非常に凝っているのだ。ストーリー、音楽はともかくとして、この舞台装置だけでも一見の価値はある。

女性歌手クリスティーンを巡る、オペラ座のパトロンの息子ラウルと、オペラ座の地下に住む「怪人」の三角関係の物語である。

一八八一年、パリのオペラ座では、新しい出し物のリハーサル中。しかし、その途中に不思議な出来事が次々起こる。

「オペラ座に巣食う幽霊の仕業だ。」

という噂が広まり、プリマドンナのカーロッタは気味悪がって役を降りてしまう。主役が抜けて困った劇場の経営者たちは、代役に若いクリスティーンを起用する。そして、その起用は当たり、彼女の舞台は好評を博する。

さて、クリスティーンが、何故歌において急成長を遂げたか。そこには秘密があった。クリスティーンは親友でバレリーナのメグに、

「実は、姿が見えない『歌の天使』から、秘かに歌を習っているの。」

と告白する。そして、その「歌の天使」こそ、劇場の地下に住む、「ファントム」、「怪人」であった。

ラウルという青年が、父の後を継いで、劇場の新しいパトロンになる。クリスティーンとラウルは幼馴染で、お互いに好き合っていた。クリスティーンはラウルにも「歌の天使」のことを話すが、彼は本気にしない。

ある日、クリスティーンは「怪人」により、地下の彼の「隠れ家」に連れて来られる。そこには池があり、何百というロウソクの炎が揺らめいていた。「怪人」はそこで、オルガンを使い、オペラの作曲をしていた。怪人は、顔の半分を白いマスクで覆っていた。興味を引かれたクリスティーンはそのマスクを取る。そこには醜い顔があった。「怪人」は顔を押さえて悶え苦しむ。

レ・ミゼラブルでも地下の下水道が重要な舞台となった。ここでもまた、オペラ座の地下に、オサマ・ビン・ラーデンやリビアのガダフィ大佐が作ったような、堅固で広大な隠れ家が作られている。パリの地下は百鬼夜行、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界なのだ。

 

これが物語で重要な役割を果たすシャンデリア。