女性下着売場の男性
道端の露店でパンを売る少年とそれを買っていくおじさん。
「手を挙げて拾うものは何でしょう?」
「何かしら?」
「答えはタクシー。」
こんな謎々があった。しかし、ヨルダンではタクシーに乗る際、手を挙げる必要さえない。アンマン城からの坂を下りた僕は、キング・ファイサル通りを、
「ボチボチまたタクシーに乗って帰ろうかな。」
と思いながら歩いていた。すると、僕の横に黄色いタクシーがスーと停まった。それに乗り込みながら、僕は考えた。
「どうして分かったんだろう。」
後で、G君にこの話をすると、こちらのタクシー、待っている人の「気配」あるいは「オーラ」を感じて停まってくれるという。さすが「アラビアンナイト」の国、全てが神秘的だ。
四時過ぎにアパートに戻り、G君に、
「街へ出ても、男にしか会わへんかった。」
と言うと、こちらの国、基本的に女性は家に居るものだという。
「奥さんの下着なんかも、ダンナが買いに来るし、女性の下着売場で、男性が選んでいるのが多いらしい。また、店員も男性が多いので、日本人の奥さんが下着を買いに行っても、男性の店員が応対するので恥ずかしくて困ったらしいで。」
そんな話をG君はしてくれた。
今回、僕が来たら、G君と一緒に「トルコ風呂」に行くと約束していた。五時前にアパートを出て、歩いて十五分くらいの場所にある、G君の行きつけの風呂屋に向かう。
日本では特殊浴場、つまり、若いお姉さんが「スペシャルサービス」してくれる浴場を、かつて「トルコ風呂」と呼んでいた。G君によると、本場の「トルコ風呂」でも、確かにマッサージはあるが、若い女性によるものではなく、筋骨隆々の男性によるものだという。
ともかく、風呂屋の門を潜り、貴重品をフロント(番台?)の横のロッカーに入れ、服を脱ぐ。貸してくれた海水パンツというよりもサッカーパンツを穿いて中に入る。中は結構広いが薄暗い。まず、床暖房の効いている大理石の床に仰向けに寝て、足の裏を壁につけて足を上げる。床の暖かさが背中からジワッと伝わってきて、間もなく汗が出始める。隣で寝ているG君と話をしながら、天井を見上げていると、子供の頃、京都で家が近くだったG君と、よく近くの銭湯へ行ったことを思い出す。
「ふたりで話していると時間がすぐ経つけど、ひとりやったらちょっと退屈やない?」
とG君に聞くと、
「いや、その場合は、色々と考え事が出来て良い。」
と彼は言う。
トルコ風呂の待合室。風呂上りですっきりしたG君。