「ドイツの歴史」

Deutsche Geschchite

マンフレット・マイ

Manfred Mai

 

 

<はじめに>

 

ドイツ語の論説文に慣れるために読み始めたこの一冊、よくぞドイツの歴史を、200ページ足らずの本に、しかも読み易い文章でまとめたと、著者の技量に拍手がしたくなった。

 

<要約>

 

一)中世

二)ルネサンスドイツ統一

三)ドイツ統一第二次世界大戦敗北

四)第二次世界大戦後

 

<感想など>

 

この本、まず読み易い。平易な文章で書かれている。また、気取った、難しい表現が全然ない。文体にユーモアさえ感じられる。各章は3ページから5ページと短く、それぞれが独立した起承転結を持っている。そして、読み物として、楽しく読み進んでいける。著者のマンフレット・マイは、おそらく学校の教材として使われることを前提に書いたのではないだろうか。1949年生まれのマイは、実際教職に就いていたことがあり、その後、児童作家として活躍しているという。ノルウェーの作家ヨスタイン・ゴルデルの書いた「ソフィーの世界」という、若者のための哲学入門書があったが(大人が読んでもすごく面白かったが)、それを思い出した。また、筒井康隆の「文学部唯野教授」も思い出した。「文学部・・・」は大学教授の世界を描いたコメディーだが、文学理論の入門書としても使える。この手の入門書は、歴史学者や哲学者、文学者が書くのではなく、作家が書いた方が、読み易く分かり易くて良いと思う。

さて、物語、読み物として、ドイツの歴史を読んでみて、

「ドイツというのは、なかなか民衆による革命の起こらない国だ。」

とつくづく思った。民衆が何度も政府の首をすげ替えたフランスとは大きな違いである。革命の機運が盛り上がったことはあった。しかし、それは権力側に武力で押し潰されたり、世論が盛り上がらなかったりして、目的を果たさないままに終わった。マイは、ドイツにおける最初の民衆による革命は、東西ドイツ統一の原動力となった、旧東ドイツ国民のデモであると述べている。長い間、ドイツで暮らしてみて、ドイツ人というのが案外保守的であることに私は気付いていた。古い物を捨てたがらないのだ。結局のところ「古い物を捨てて一からは始める」ことに不安を持つドイツ人の気質が、革命のブレーキになっていたのではないかと思う。

この本を読み終えると、ドイツの歴史を全て知ったような気になる。しかし、2000年に渡る歴史を200ページにまとめたのであるから、書かれていない、取り上げられていない事項もいっぱいあるはず。しかし、それでも良いではないか。ともかく、歴史の流れさえ知っておけば、幹の部分を押えておけば、枝葉は後で繁るというものだ。

 

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