お昼の散歩のパートナー
夕方、食後の散歩をしたヴィックラート城。堀に囲まれている。
昼休み、インスタントラーメンで食事を済ませた後、同僚の女性、ブリギッテを、
「これから散歩するけど、一緒に来ない?」
と誘ってみる。彼女がいつも食事の後散歩していたのを覚えていたからだ。
「いいわよ、私もちょうど、外に出ようと思っていたところ。」
会社を出て、彼女と散歩を始める。お互いの趣味について探り合っているうちに、彼女も推理小説のファンだということが分かった。僕も「大」のつくほどのミステリー、推理小説のファン。旅が多い僕は、いつもドイツ語の推理小説を持ち歩いている。
「どんな作家が好きなの。」
とふたりで歩きながら話していると、ふたりともスウェーデンの作家が好きであることが分かった。ラーソン、マンケル、ネッサー、彼女の挙げる作家を僕は殆ど読んでいる。
「わあ、仲間がいた!」
ふたりで、最近読んだ本の情報をあれやこれや交換しながら歩く。散歩も仲間がいるのは楽しい。まして、趣味を同じくする人なら。
話題は推理小説からお互いの「過去」の話になる。彼女も僕と同じく、大学ではコンピューターとは全然違うことを勉強していたとのこと。彼女は英文科を出て、最初英語の先生を志していたのだった。だから英語が上手いんだ。しかし、その後「運命のいたずら」で、コンピューターのプログラマーになったのだという。これも僕と全く同じパターン。
六時に仕事を終り、会社の近くのプールに行く。前もって電話をかけ、今日は午後九時まで開いていること、二十五メートルのプールがあること、入場料が四ユーロ五十セントであることは知っていた。しかし、二十五メートルのプールの真ん中には、横にロープが張られていた。そのロープの片側は浅く、もう片側は深いので、子供達が深い方へ行かないようにするためのロープのようだ。バーデマイスター(監視人の親方)に、
「ねえ、あのロープ、もうちょっと何とかならないの。」
と文句を言う。
「あんたが真剣に泳ぎたいなら、そんなプールを紹介するけど。」
せっかくだけど、今更別のプールへ行く気はない。
泳ぎだす。プールの真ん中まで来ると、ロープがあるのでそれを避けるために一度潜る。そして、ロープを過ぎた辺りで浮かび上がる。泳ぎにくいことこの上ない。
プールの近くの中華料理店で夕食を取る。その後、レストランの向かい側にある、ヴィックラート城に入ってみる。この街にはもう何十回と来ているが、城の敷地に入るのは初めて。ピンク色の建物が、池に映って美しい。また、庭に植えられたバラも見頃だ。
蒸し暑いので、ホテルの部屋の窓を少し開けたまま眠る。二時ごろに蚊に刺されて眼が覚める。窓を閉めて電気をつけて蚊を探すが見つからない。冷蔵庫からビールを出し、それを飲んでまた眠る。朝までにまた二、三箇所刺されてしまった。
同じくヴィックラート城。夕日に映えたピンクの建物が美しい。