鵜の目鷹の目
ダブルスの試合って、自分でやってみると、後ろからもボールが来るので、えらく難しい。
ダブルスを見ていると、昔ゲームセンターにあった「スマートボール」というゲームを思い出す。傾斜のある箱の中を、ボールがあちらこちらにぶつかり、跳ね返りながら、その回数で得点が増えていく。目まぐるしいゲーム。
ナンバーワンコートのセットが二対一になり、第四セットが始まったので、自分たちの席に戻る。ディミトロフ選手の勝利で試合が終わり、十分ほどして、次の試合の女子選手ふたりがコートに登場した。外を歩いていると、係員に先導され、ラケットの入った大きなバックを背負った選手が、試合に向うのに出会う。テニス選手の一番大変なこと、それは自分の試合が何時始まるか分からないことではなかろうか。第一試合はいい。一時なら一時にきっちり始まるから。ひとつのコートでは大抵、三試合が組まれている。第二試合や第三試合の選手は、何時始まるか分からない試合に向って、身体と心の準備をしなければならない。大変なことだと思う。モニターを見ていて、
「あ〜あ、やっと終わるかな。」
と思って立ち上がりかけたら、実は逆転でもう一セットやることに。それだけで、また最低三十分は待たなくてはいけないことに。
先ほども書いたが、選手の打つ球はメチャ速い。審判でさえも、入ったのか出たのか良く分からない場合がある。そのために、コンピューター判定「ホークアイ」鷹の目が使用される。微妙な判定の場合、選手がその判定に異議を唱えることができる。「チャレンジ」と呼ばれている。その回数は、試合で何回までと決められている。その場合、主審は、
「ホークアイに判定を委ねます。」
と宣言する。スコアボードがホークアイの視線に切り替わり、ボールの軌跡が写り、最後に「イン」、「アウト」の判定が出る。画面がホークアイに切り替わるまで十秒ほどかかるが、その間観客は、手拍子をして結果を待つのである。
しかし、よく考えてみれば、人間の目より、コンピューターを信用するわけだから、審判なしで、ホークアイだけ判定すれば、人件費も節約できてよいと思うのだが。審判は、ボールが出たとい「フォールト」と叫び、その声がなければ「イン」ということでプレー続行となる。ホークアイで瞬時にブザーを鳴らせば、審判の代わりは十分に勤まると思うだが。しかし、伝統を重んじる英国テニス界、そんなことはしないだろうな。
一度にわか雨があって、三分ほど試合が中断したが、その後は雨もなく、順調に試合が進む。ウィンブルドンと雨は切っても切り離せない。英国では、ウィンブルドンの季節、何故か雨が多い。突然の雨に、コートにシートが広げられるシーンはお馴染み。
女子のシングルスの試合は一時間ほどであっさりと終わる。一方的な展開での二セット先取だった。どちらかが第二シードの強豪であることは知っていた。当然、一方的に勝った方が第二シードの先取だと思っていた。しかし、実は負けた方だった。流れが悪いと、調子に乗れないと、強いはずの選手でも、簡単に敗退してしまうのがテニスなのだ。
敗れた選手も、惜しみなく送られる拍手の中、コートを去っていく。