出発

午前六時、「函館ライナー」で函館駅を出発。夜明けまでにまだまだ間がある。

 

六時一分、函館発。

JR函館駅から新幹線の駅までは、「函館ライナー」というカラフルなシートの三両編成のシャトル電車が結んでいる。さすがは寒い北海道だけあり、扉はボタンを押して開け、乗り降りした後はボタンを押して扉を閉めることになっている。車内を出来るだけ暖かく保つためなのね。新函館北斗駅に降りると、新幹線ホームに六時三十五分の「はやぶさ十号」が停まっていた。緑色のメタリック塗装の車両。先頭車のノーズがメチャ長い。しかし、最近の新幹線の駅名は長い。「新函館北斗」ですって。新函館だけでよいと思うのだが、実際に駅の所在地である北斗市の人が、

「おれっちの名前も入れろ。」

と、きっと文句を言ったんでしょうね。北陸新幹線には「黒部宇奈月温泉」「くろべうなづきおんせん」なんて駅がある。計十一字。一番短い駅名は、もちろん「津」「つ」。

 

六時三十五分、新函館北斗発。

 「はやぶさ十号」は定時に出発。

「は〜るばる来たぜ函館〜、さ〜かまく波を乗り越えて〜」

はるばる来た函館には十四時間しか居なかった。

七時ごろ青函トンネルに入る直前に、やっと少し明るくなってくる。辺りは雪で覆われている。昨日、列車がトンネルを抜けて北海道に入ったとき、

「銀世界の北海道へようこそ。」

という、粋な社内アナウンスが入った。

北海道まで新幹線が通っても、まだ利用者は少ないらしく、僕のいる車両には十人も乗っていない。青函トンネルの前後で「木古内」(きこない)と「奥津軽いまべつ」という駅に停車。周囲は何もなく、数人の人がホームに立っているだけだった。お猿さんか熊さんが乗ってきそうな新幹線の駅もあるんだね。

「只今より青函トンネルに入ります。全長五十三キロで、二十五分かかって通過いたします。この青函トンネルは・・・」

というトンネルについての説明が車掌さんよりある。

昔「海峡」という本を読んで感動したことがある。青函トンネルの先進導抗、パイロットトンネルを掘る男たちの話。湧水に悩まされ、何人もの人命を犠牲にしながらトンネルを掘り進んだ男の物語。勝新太郎主演で映画化もされた。

僕は過去に十回以上北海道に渡っている。学生時代、姉夫婦が帯広と十勝池田に住んでいた。それで、大学の休暇の際、よく北海道を訪れたのだ。当時はまだ青函連絡船の時代。トンネルを使って北海道に渡ったのは今回が初めて。

 

とっても長いノーズのJR東日本が誇る「E5系」車両。トンネルに入る際の衝撃を和らげる効果があるそうな。

 

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