白鳥にされた娘
歌劇場のバルコニーからは、「マイフェアレディ」で有名なコベントガーデンが見下ろせる。
出し物は「白鳥の湖」、作曲者はチャイコフスきーである。このバレーで演じられる曲のうち何曲かは「組曲」に取り入れられており、オーケストラだけでもよく上演されるので、耳に馴染みの深い。
一場面が終わるごとに、登場人物がお辞儀をする。一幕が終わるたびにカーテンコールがある。
全てが大袈裟なんだよな。
このバレー、一応筋書き、ストーリーがある。(当然かも知れないが。)
王子ジークフリートは、母親である女王に、早く結婚するように催促される。そして、女王は息子に、次の舞踏会の場で結婚相手を選ぶように命令する。 何とも、横暴な母親。でも「女王」なのだから、まあ仕方ないとしよう。
母親の横暴さに嫌気のさしたジークフリートは、気分転換に森へ狩に出かける。彼は湖の畔で、王冠をかぶった白鳥を見つけ、それを弓で射ようとうする。その瞬間、白鳥は美しい娘に変身する。悪魔のロートバルトにより白鳥に変えられた王女オデットは、夜の間だけ人間に戻ることができるのだ。そんな「白鳥にされた娘」が実は何十人もいた。時々現れる、黒い衣装を着て腕の下に翼をつけた「つばめおじさん」みたいな人が、そのロートバルトである。
ジークフリートはオデットに一目惚れしてしまう。オデットもまんざらでなく、ふたりは一晩中踊り続ける。オデットはジークフリートに白鳥の姿に変えられた自分の秘密を告げる。そして、自分に永遠の愛を誓ってくれる男性が現れたら、自分の魔法は解けると説明する。ジークフリートは自分がその役割を担うことを約束する。そして、
「じゃあ、お母さんに紹介するから、今度の舞踏会に来てね。」
と告げる。
舞踏会の日。母親は美しい娘たちをジークフリートに紹介し、結婚に大して彼に「うん」と言わそうとする。しかし、ジークフリートは、
「僕の好きな人がもう少ししたら来ますから。」
と言って相手にしない。「宴たけなわ」の頃、デーモン小暮みたいな男が、オデットとそっくりの娘を伴って到着する。しかし、何か変。彼女は今日は黒い服を着ているぞ。実は、客はロートバルトであり、若い女性はオデットに化けた、ロートバルトの娘、オディールだったのだ。
コケティッシュなオディールは巧みにジークフリートを誘い、ジークフリートは彼女をオデットだと信じて、愛の告白をしてしまう。これで、オデットは永久に白鳥でい続けなければならなくなったのだ。
「計略引っかかったな。」
ロートバルトは嘲笑を残して去り、ジークフリートは自らの犯した過ちに打ちひしがれる。
「早く人間になりたい。」
妖怪人間ベムみたいなことを言っていたオデットは、その夢が断たれる。
歌劇場のロビーで開演を待つ人々。