カレーミー
カレーミーが今回食べた最後の麺類になった。考えてみると、よく食べたもんだ。
ワインバーを出た後、息子はもう一軒友達と飲みに行くと言って、妻と僕を置き去りにして消えた。(土曜日の夜だもんね。)妻と僕はバスでコンドへ戻る。バスはアナウンスもないし、次の停留所も表示されない。周りの景色を一所懸命見ているしかない。でも夜で良く見えない。何とか、コンドの前でバスを降りることができた。よかったあ。ベッドに入ったらもう一時過ぎだった。
翌朝、シンガポールの最後の日、明け方に帰ってきた息子も十一時ごろには起きだして、三人で近くのVIVOセンターに朝兼昼飯を食べに行った。フードモールで、妻はずっと食べたいと言っていたナシ・レマ(マレー風お子様ランチかな)を、息子はシンガポール料理の超定番チキンライスを、僕はカリーミー(カレー麺)を注文した。カレーとうどんの組み合わせって、初めて考え出した人は偉いと思う。「カレーうどん」に「カレー南蛮」、どれも僕の好きな麺類。(麺類なら何だって好きなんだけど。)カリーミーは、もう殆ど日本のカレーうどんの世界だった。うどんと同じ太ささの黄色い麺、それにココナッツの味のする出汁がたっぷり。
シンガポールの土産に、シンガポールのインスタントラーメンを買おうと思って、ショッピングモールの中にあるスーパーマーケットに行く。確かにラーメンは沢山あった。でもその八割以上が、「日清食品」とか「明星食品」、つまり日本のメーカー。どれも英国の中華食材店で売っている。日本のインスタントラーメンは世界の最高峰にあり、どの国の人にも愛されているということが良く分かった。
コンドに戻って昼寝をする。その間に、息子はサッカーに行った。目を覚ますとかなり暑くなっている。それでまたまた、階下のプールへ涼みに行く。天気の良い日曜日の午後ということで、プールサイドは子供たちを連れた住人でいっぱい。誰かが誕生パーティーをやっていて、「ハッピー・バースデイ」の歌が聞こえてくる。
少し泳いだ後、寝椅子でまたウトウトしていると、息子が帰ってきた。高校時代の同級生サンキットが、ちょうど仕事でシンガポールに来ていて、今日の夜にシンガポールを発つ前に、コンドに立ち寄るという。間もなく大きなスーツケースを持った若者がプールの向こうに現れ、息子が彼を迎える。ふたりは、プールサイドのテーブルに座って話しだした。息子の高校時代の同級生、絶対に会ったことはあると思うのだが、もう十年以上前で思い出せない。
「名前は覚えてるんだけど、顔と名前が一致しないや。」
とサンキットに言うと、
「皆ずいぶん変わっているからね。」
と彼は言った。妻は冷蔵庫から冷えたビールを出しては、定期的に息子たちのテーブルに供給している。そのうち、息子の友人のミキも加わる。暮れゆく空の下、若者たちは楽しく話をしている。
十日間「ナシ・レマ」を食べたいと言い続けてきて、最終日にやっと食べられた妻。