スマホ社会

 

超近代的なショッピングモールの隣に・・・

 

 シンガポールに到着後、七日間は、毎日コロナの検査をしなければならない。三日目と七日目は指定されたテストセンターに出向く。その他の日は、自分で購入したキットを使って、ART検査(抗原迅速検査)をやり、シンガポールの保健省に結果を報告するのである。もちろん、検査結果の送付は、スマホかパソコンで、保険省のウェッブサイトを通じて行う。

 前の章でも書いたが、スーパーやレストランに入るときには、必ず入り口にあるセンサーにスマホをかざし、スマホの中に入っている「トレースアプリ」とセンサーを交信させる。その際、僕のワクチン接種や検査結果の情報が店側に伝えられ、オーケーであれば、緑色のライトが点灯し、店の中に入れる。

「スマホを持っていない人はどうなるの?」

と言うことになるが、シンガポールでは「スマホ」は「持たなければいけない物」なのだ。例えば、入国申請の際、

「あるOSバージョン以上のスマホを所有し、トレースアプリをインストールしてください。」

という項がある。その後、

「もし、持っていない人は、買うか、レンタルするかしてください。」

と書いてある。つまり、シンガポールでは、スマホは「必須」であり、それを前提に、社会が成り立っているのだ。スマホがなければ、買い物さえできない。借金してでも、スマホを買えということなのだ。

 もう一つはタクシー。前回シンガポールを訪れた四年ほど前は、まだ「流し」のタクシーがあり、道端やタクシー乗り場で、タクシーを捕まえることができた。しかし、今回は全て「ウーバー」方式に変わっており、街角には流しているタクシーは皆無。皆、スマホのアプリを使って、タクシーを予約する。

「何分後に、このナンバープレートの車が迎えに来ますよ。」

というSMSメッセージを受け取り、待っているとタクシーが来る。僕も試してみたが、ダメだった。何故か。それは、僕の携帯が英国の番号だったから。シンガポール以外の番号は、アプリが受け付けてくれないのである。

「それで、娘たちは空港で、シンガポールのSIMカードを買っていたのか。」

と、かなり遅れて納得する。

 また、キャッシュレスも浸透しており、老いも若きも、スマホに入った、自動決済アプリで買い物をしたり、バスに乗っている。シンガポールは、国民の八割が華僑、中国系だと聞いた。中国人って、本当に、ハイテクを生活に取り入れるのが速い。二年半前、息子の結婚披露宴で北京に行ったが、現金のやりとりはほぼ皆無。地下鉄の乗り降りから露天商に至るまで、QRコードを使っての自動決済だった。僕は冗談で言ったものだ。

「きっと、乞食だってQRコードを置いて商売してるよ。」

 

・・・こんなマーケットがあったりして、これがシンガポールらしい。

 

次へ 戻る