マーライオン
これがマーライオン。小便小僧に比べて歴史の浅い分は大きさでカバー。
「シンガポールで是非見なくてはいけないのは何なの。」
とシンガポール支社から最近英国に転勤してきた同僚のTさんに聞いた。
「やっぱり、マーライオンかな。」
と言った。彼はちょっと自信のない表情だった。京都でどこを見たらよいかと訪ねられたら。僕は自信を持って、
「金閣寺、竜安寺、三十三間堂、二条城、清水寺。」
と答えられるけれど、彼にはそれほど明確な自信が見受けられなかったのだ。
「何せ、『世界三大ガッカリ』ですからね。」
と彼は付け足した。
「世界三大ガッカリ」には諸説があるが、
@ ブラッセルの「小便小僧」
A シンガポールの「マーライオン」
B コペンハーゲンの「人魚の像」
というのが一般的。これにドイツの「ローレライの岩」と「ブレーメンの音楽隊の像」が加わることがある。メチャ有名な割にはしょうもない、言い換えれば。
「どうしてこんなしょうもない物が、それほど有名なんよ。」
ということになる。
「マーライオンさん、こんにちは。」
二日目の朝、ワタルのオフィスの近くにあるマーライオンにお目にかかった。高さ十メートルほどの白い像で、水辺に立ち、顔はライオン、身体は魚、口から水を吐いている。
「小便小僧に比べたら、結構存在感があるやん。」
と僕は思った。何せ、小便小僧は六十センチしか背丈がない。最近、仕事でベルギーへ行くことが多いが、何故かいつも小便小僧を見に行ってしまう。小便小僧を見るのが楽しみなのではなく、それを初めて見る人の反応を見るのが楽しみなのだ。
一九七二年に作られたこの「マーライオン」はシンガポールのシンボル。そもそも「シンハ」はサンスクリット語で「獅子」を意味し、マレー語でシンガポールを指す「シンガプラ」は「ライオンの町」だと、百科事典に書いてあった。
水を吐くで思い出した。前回、インドネシアとマレーシアを訪れたときに気付いていたが、タイやシンガポールでも、トイレで大きい方を済ませた後、お尻を水で洗うの。そのためのホースが便器の横についている。日本で、ウォシュレットが普及するずっとずっと以前から、東南アジアの人々は水でお尻を洗っていたのだ。ホースの先にシャワーのノズルが付いていて、肛門へ向けて水を発射するわけ。ところが、これがなかなか難しい。壁とか、床とか、下着とかズボンにかかってしまう。ということで、トイレの床はいつもベチャベチャであり、失敗すると、おしっこをもらしたような様相で出てこなくてはならないことも。暑いからすぐ乾くけどね。
とっても鋭角的なシンガポールのスカイライン。