罰金国家
漢字の看板が多いので、その意味では日本人には馴染み易い。
シンガポールは交通機関、店やカフェ、レストランでのサービスで、顧客サービス意識が行き届いている。また、英国のように街にゴミが落ちていたり、建物や鉄道建造物に落書きもない。極めて清潔。ここまでは日本と同じ。しかし、日本と決定的に異なるのが、マルチカルチュアルな雰囲気、つまり異文化を受け入れていこうと雰囲気である。永年外国人として異国で生き、少し肩身の狭い思いをしたことのある人には、住みやすい町だと思う。人口の八十パーセント近くが中国系の人だというが、皆「それなりの」英語を話すし。(「シングリッシュ」と呼ばれているらしいが。)
街にはまだ沢山の道路や建物が建設中。しかし、そこで働いている人は、シンガポールの人ではない。ほぼ全員が、バングラディシュやインドから来た人たちのように見えた。
シンガポールに来て感激したのは、
「皆、信号を守っている。」
ということ。日本では当たり前だが、通常、中国やインド、その他の東南アジアの国々では、
「みんなで渡れば怖くない。」
式で、車が来なければ(来ていても)信号に関係なくガンガン道路を渡る。しかし、シンガポールの人々は日本人と同じように交通規則を守るのだ。シンガポールの民族構成は、
@ 中国系 約75%
A マレー系 約15%
B インド系 約10%
であるという。つまり、民族的に言って、「基本的に信号を守らない国」の人々なのだ。シンガポールは一九六五年に独立したが、近代化、欧米化を目指したリー・クアンユーの率いる政府は、「信号を守らない」、「道にゴミを捨てる」、「道に唾を吐く」等、それまで人々が「ごく当たり前」にやっていたことに罰金を課したのであった。それで、シンガポールの街はあれほど清潔で、秩序の保たれたものになった。やはり、「良心に訴えるより、金に訴える方が効果的」というのは本当なんだ。
罰金の一例だが、
@ ガムを噛む1000ドル
A 公共の場での喫煙500ドル
B 公共の場でゴミを捨てる1000ドル
C 公共のトイレで用を済ませた後水を流さない500ドル
D 立ちション1000ドル
E 公共の場で唾を吐く5000ドル
ちなみに、この文章を書いている時点のレートで、千シンガポールドルは、七万九千円である。ある意味で、シンガポールは「罰金国家」なのである。しかし、「公衆便所で水を流さない」というのは、それをやった人を、一体どのようにして特定するのだろう。ウンチに含まれている体液から、DNAを採取するのかな。
アジアの街にしては、超例外的に超クリーンな街である。