夏の終わり
今日は和食。七人分の料理、料亭の厨房のように、結構豪快に作って行く。
四日目、朝起きてリビングへ行く。
「わあ〜、出来た〜。」
エンゾーの十八番を叫んでしまう。世界地図のジグゾーは完成していた。昨夜遅くまで、末娘と息子が頑張ったようだ。起きてきたエンゾーがミルクを飲んだ後、九時頃まで彼と庭で遊ぶ。
九時半ごろに、ワタル一家とミドリが、州都のカリアリに行くと言って出て行った。その日は、これまでになく暑かった。気温の高さ加え、これまでにない湿度が感じられる。今日は、休養日で、別荘にいるつもりだった。しかし、昼過ぎに、さすがに暑さに耐えかねて、マユミとスミレと一緒に、車でビーチに向かう。
「ゲゲゲ〜。なんやこの気温は。」
車の中の温度は四十一度を指していた。海に浸かっていると、本当に気持ちが良い。沖に向かって泳ぐ。身体の下で魚が群れている。灰色で、鯛のような形、十センチくらいの体長で、尻尾のところに黒い輪がある。
「わっ、クラゲや。」
前方一メートル以内に、二匹のオレンジ色のクラゲを発見。慌てて引き返す。日本でも、夏の終わりはクラゲが多いが、ここでもそうなのかも。
確かに暑いが、空に少し変化があった。これまでの数日は、雲一つない青空だったのだが、空に刷毛で引いたような雲が掛かりだしている。三時半ごろに別荘に戻ると、ワタルたちも戻っていた。
「早かったやん。で、カリアリはどうやった?」
と聞くと、
「とにかく暑かった。」
と息子が言った。シンガポールの人でも応える暑さ、相当なもの。
その日の夕食担当は、僕と妻。
「今日は、和食で行くでえ。」
と言うことで、ナスの天ぷら、肉じゃが、鶏の照り焼き、味噌汁などが食卓に並んだ。
「サルディニアで食べる和食もオツなもん。」
夕食の後、皆でリビングで過ごす。エンゾーもご機嫌で、皆に囲まれて、キャッキャッと笑っている。本当に、家族全員が久しぶりに集まったという感激に浸る。
「ジグゾー完成おめでとう!」
レモンチェロで乾杯。
その夜、強風が吹き荒れた。夜中に大きな音がしたが、翌朝起きてみると、庭のパラソルが倒れていた。根元には十キロ以上の重りがあったのだが。そして、急に涼しくなった。
絶好調のエンゾー。