紀元三十六年のストリップ
身にまとった七枚のヴェールを順番に脱ぎ捨てていく扇情的な「七枚のヴェールの踊り」。
舞台は第二場へと入っていく。全てが続いて演じられ、歌手もオーケストラも休憩なし。なかなか大変そうである。歌詞は僕が得意なドイツ語、時々単語は聞き取れても、理解するのは難しい。
第二場、サロメが義父ヘロデの催す宴会の席を離れてテラスに出てくる。義父がサロメに投げかける淫蕩な眼差しに耐えられなくなったのだ。サロメが爽やかな夜風に当たって一息ついていると、古井戸からヨカナーンの声が聞こえてくる。サロメは声の主に強い関心を示し、ぜひ会って話がしたいと衛兵隊長のナラボートに頼む。ナラボートは最初、へロデから堅く禁じられているからと言って、面会を許そうとしない。しかし、サロメが
「お・も・て・な・し、ウッフ〜ン」
と、媚態を振りまきながら頼み込むと、サロメの妖しい魅力の虜になっているナラボートは拒みきれず、ヨカナーンを古井戸から出すよう兵士たちに命ずる。
第三場、古井戸のふたが開けられ、ヨカナーンが姿を現す。彼は、ヘロディアスが前夫の死後、弟のヘロデと結婚したことを「不義」だと責める。
「別に、死なはった後やったら、誰と結婚してもええやん。」
と思うのだが、「貞女二夫にまみえず」というのが、当時のユダヤ人の倫理観なのだろう。サロメは最初ヨカナーンを恐れながらも、次第に彼の姿と声に魅了されて、彼の肌に触わたいと執拗に迫る。しかし、彼はそれを拒否する。
「ちょっとくらいヨカナーン。」
と言ってもダメ。拒絶されればされるほど、ヨカナーンに対するサロメの執着はますます高まり、ついには彼の口に接吻したいと叫ぶ。ヨカナーンは断固としてこれをしりぞける。
「あきまへん、パビロンの娘よ、ソドムの娘よ、絶対あきまへん!」
サロメを恋するナラボ−トは、ヨカナーンに迫るサロメの姿に耐えられなくなり、剣で自害して果てる。サロメはそれを気にとめることもなく、死体を乗り越え、なおもヨカナーンに接吻を迫るが、ヨカナーンはそれを拒み、呪いの言葉を残して古井戸の中へ帰ってゆく。サロメは打ちひしがれて、古井戸の縁に崩れ落ちる。
第四場、ヘロデが、ヘロディアスと従者たちを従えて登場。へロディアスは、ヘロデがサロメを見つめてばかりいるとなじる。ヘロデはサロメに酒や果物を勧め、隣に座るよう求めるが、サロメはこれを拒絶する。
「どうせ、お尻に触ったり、エッチなこと、考えてるんでしょ。」
そのとき、古井戸のなかからヨカナーンの声が聞こえてくる。それを聞いたユダヤ人たちが、救世主の出現と数々の奇跡について語りだす。ヘロデは怯える。ヘロデは、不安な思いを振り払おうと、サロメに踊ってくれと頼む。サロメは拒否する。しかし、ヘロデが報酬としてなんでも望みのものを与えようと誓うと、それを承諾して踊り始める。サロメはヘロデの淫靡な眼差しを浴びながら、身にまとった七枚のヴェールを一枚ずつ脱ぎ捨ててゆく煽情的な踊りをおどる。紀元三十六年のストリップである。
いくら「売り」と言っても、こんなポスターはちょっとやりすぎじゃない。(カナダ、マニトバ・オペラ)