飲み放題天国

 

部屋の窓からプールとプールバーを望む。毎晩音楽やダンスをやっている。

 

チェックインを済ませた後、妻と義母が買い物をしている間、空港内のパブでギネスビールを飲んだ。真ん中の娘、ミドリに手紙を書きながら。休暇に出るとき、飛行機を待つ間に飲むビールの味は格別。解放感がビールの味を増すのだろうか。

飛行機はロンドン時間の午後二時半に離陸。機内で朝作った握り飯を食う。その他、ポテトチップスとか、色々な食べ物がマユミのリュックの中から出てくる。子供達は常々、

「ママのリュックはドラエモンの『四次元ポケット』だね。」

と言っている。

飛行機はギリシア時間の午後八時、ロードス空港に到着した。この季節、午後八時にはもう暗く、辺りの様子は見えない。そして、いつものことだが、エーゲ海の島に降り、タラップの上に立つと、風が柔らかい。

空港で、マユミが今朝予約しておいたレンタカー、小さなヒュンダイを借りる。ガソリンは先払いとのこと、最初に満タン三十リッター分の金を払い、最後空にして返却するシステムだという。

いつも、マユミとふたりの旅では、自炊施設付きのペンションを借りるが、今回は義母がいることもあり、三食付、五つ星のリゾートホテルに泊まることになっている。レンタカー屋の兄ちゃんの道案内は的確で、僕等は迷わずに、九時前には、ホテル「マーレ・コスモポリタン」に着いた。

駐車場からフロントへ向かうとき、食堂の横を通る。ベランダで大勢の人が夕食を取っていた。夜になっても外で食事ができる気温であることが嬉しい。

チェックインの際、右手に紫色のプラスチックの腕輪を付けられる。金具で止めてあるので壊さないと取れない。その腕輪をしていると、レストランやバーで自由に食い物、飲み物にありつけると言う。バイキング形式の食事だけではなく、バーでのビール、ワインなどの飲み物も、全て料金に含まれているのだ。いわゆる「オール・インクルード」というやつ。腕輪をされたとき、

「これ、仮釈放された囚人の付ける、電子タグかい。」

と付けてくれたお兄ちゃんに冗談を言う。英国では、刑務所が満員になり、多くの囚人がマイクロチップ(電子タグ)の付いた足輪をはめられて、刑務所から出されているのだ。

フロントの女性が、

「お食事をされるならお早めに。」

と言った。夕食は九時半までで、その時間が迫っている。僕達は、部屋に荷物を置くと、直ぐに食堂に取って返した。食事の味付けは、さすがに五つ星のホテルだけありなかなかのものだった。水道の蛇口のような所からいくらでも汲めるハウスワインもすっきりして飲み易い。食事が終わった後、テラスに座って地酒、ウーゾを飲む。いくら飲んでも金を取られないと思うと、ついつい意地汚く飲んでしまう。

 

飲み放題天国、ガンガン飲むぞ。実は、義母はアルコールが一滴も飲めない。

 

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