金太の大冒険
ロードス島はまだまだ花の季節。そもそも「ロードス」とは「薔薇の花咲く島」という意味。
食事が済み、飲み物を手に僕達三人はテラスで休んでいた。前に独りで座っている男性に「ハロー」を言う。彼はベルギーに住んでいるが、元々はトルコの出身だという。
「トルコはイスタンブールの一部だけがヨーロッパで、大部分はアジアなんです。あなた方もアジア人、わたしたちもアジア人、仲間ですな。」
と彼は言った。なるほど、そんなものか。トルコはアジアの一番西、日本は一番東、随分と離れてはいるけれども。
部屋にはダブルベッドとソファベッドがあった。妻と義母にダブルベッドを渡し、自分はソファで眠った。
翌朝、十月七日、七時に起きる。ロンドンでは五時。早起きの僕が、いつもボチボチ起きる時間だ。まあまあよく眠った。寝る前にウーゾを二杯飲んだが、二日酔いもない。妻と義母はまだ眠っている。
僕は海岸に沿って少し歩いてみることにした。足首と手首に、トレーニング用の重りを巻き付ける。手首は各五百グラム。足首は各一キロのウェートだ。重りをつけてのウォーキング、娘のミドリに教えてもらった。結構良い運動になる。最近、昼休みに四十五分散歩する。これをつけていると、息が切れるようなことはないが、結構汗が出る。このウェート、スーツケースに入れようとすると、マユミはあまりハッピーではなかった。
「ええ、こんなものまで持って行くの。」
それだけで三キロあるからだ。しかし、反対を押し切って持って来た。
ホテルのすぐ前が海。海岸に出て歩き出す。石浜だ。今朝は風強く、雲を多い。僕は歩くとき、いつも歌を口ずさんでいる。そのとき頭に浮かんだ実に雑多な歌を唄いながら歩く。その日は何故か「金太の大冒険」の歌が浮かんできた。それを唄いながら歩く。
この歌、何十年も忘れていたが、数週間前、E社の棚卸しのサポートの為、夜ひとりでオフィスに残っているとき、
「そうだ昔こんな歌もあった。」
と突然思い出したのだった。早速、仕事中ではあるが、ユーチューブで聴いた。金太とお姫様の歌。金太は喧嘩が弱くいつも負けてしまう。
「金太負けが多い〜」
金太はマカオに逃げる。
「金太マカオに来る〜」
僕は深夜のオフィスで独りで笑い転げていた。
一時間歩いて帰ると、もう妻と義母は起きていた。九時過ぎに朝食を食べに行く。朝食も豪華。義母は、ヨーロッパ人が「縦にも横にも」でかいので驚いている。毎日これだけ食べたら太るだろう。食べ放題だとついつい食べ過ぎてしまう。これだと一日二食で十分。三食付と言うこととは、このホテルから一歩も出ないで過ごす人もいるからなのだろう。
テラスで食べる朝食は格別。でも、たまには味噌汁も食いたい。