英国人の日本自慢
僕らが乗ったイージージェットのエアバス。往復で一万五千円くらい。それでも儲かるらしい。
ギリシアはエーゲ海に浮かぶロードス島に行くことになった。今回は、妻のマユミともうひとり、ロンドンに遊びに来ている妻の母、義母、つまり姑が同行する。エーゲ海の色に魅せられてしまった妻と僕。一度両親にも見せてあげたいと招待した。そうしたら、義父は来ないで、義母だけがやって来た。
前日、会社でのチームミーティングの席、しばらく留守にするので、仕事の引継ぎをする。チームのメンバーがどこかへ行くのかと聞く。ギリシアのロードス島へ行くと答えた後、姑と一緒のホリデーだと言うと、誰かが、
「ご愁傷様」
と言った。英国では舅、姑をネタにした、ジョークは数多い。そして、余り良いのはない。義母と僕はまあまあ上手くいっている方だと思うので、一週間一緒にいても、多分大丈夫だろう。
ロードス島に発つ日、飛行機は午後、朝時間があったのでプールへ行った。プールから上がって、時々顔を合わせる兄ちゃんと話す。彼は日本のバイクの崇拝者だった。彼からホンダのスーパーカブの技術と、本田宗一郎の思想の説明を受ける。僕が学生の頃、初めて乗ったバイクがスーパーカブ。足だけクラッチが切り替わり、片手が空くので、うどん屋の出前が片手だけで乗るのに極めて好都合なバイクであった。そのお兄ちゃんに最新のスーパーカブを見せてもらったが、基本的に、その構造は変わっていなかった。本田さんの技術の息の長さに驚いた。しかし、英国人から、本田宗一郎の自慢話をされるというのも面白い。
帰って、朝食を作りながら、同時に握り飯を作る。その日乗る「イージージェット」は、機内で無料の食事や飲み物は出ないからだ。マユミが、その日の朝になってから、ロードス島で借りる車の手配を始めた。それに時間がかかり出発が遅れたが、何とか車は借りられたようだ。
十時二十分、車でガトウィック空港へ向かって出発。一時間余の運転の後、空港からかなり離れた民間の長期間駐車場に車を停め、そこからバスで空港へ。午後一時にチェックインをする。
先ほども書いたが、今回もイージージェットという格安航空会社。機内サービスなし、機内は自由席、そして、荷物を預けるのにもひとついくらという風に余分に金が要る。それで荷物は三人でひとつにまとめた。
駐車場から空港へ向かうバスの中、暇なので、妻と義母にクイズを出す。
「京都の舞妓さんが、これから僕達が遊びに行くエーゲ海の島へ行いました。彼女が帰ってから、同僚が『どこへお行きやしたんどす?』と尋ねたの。さて、舞妓さんは何と答えたでしょう。」
「ロードスどす。」
ピンポーン。
ロードス島は、トルコのすぐ近くにある。そして長い間トルコ領だった。