ミニ同窓会、その一
同窓会、同級生というものは時空を越えて存在するものだと思う。
ロンドンを発つ二週間ほど前、「ロンドン行くでー」というタイトルでツネボンからメールが来た。彼からメールを貰うなんて五年ぶりくらいじゃないかな。彼は中学と高校の同級生、昔ドイツに住んでいるときに一度訪ねてきてくれたことがあった。メールを読んでみると、二週間後に学会で英国に来るとのこと。彼はお医者さんなのだ。
「ひえ〜、こんなことってあるの。」
彼の日程を見て愕然とする。僕が日本へ帰っている期間と、彼が英国に居る期間が、完全にオーバーラップするのだ。滅多に英国に来ない人と、滅多に日本に帰らない人が、すれ違いになるのだから、世の中というのは面白い。もう「君の名は」の世界。(古すぎて誰も知らないかな。)
「うっそやん。こんなことってある?恋人どうしやったら運命的ドラマやで。」
とツネボンも書いてくる。今回は残念ながら会えないかと諦めかけたところ、
「でも完全にあかんわけやない。ヒースローで出会るでぇー。めっちゃポジティブやろ。人間あきらめたら終わりや。こうなったら意地でも顔見に行ったる。」
と彼は書いてきた。ふたりの予定を詳細に比べてみると、僕が日本へ帰った翌朝に彼が英国を発つことが分かった。それで、その日の朝、一緒に朝食を取ることになった。
「朝から酒池肉林じゃあ。」
とツネボンは書いてきた。何を考えているのやら。
水曜日の朝六時、僕は生母の見送りを受けてマイクロバスに乗り、関空に向かう。関空では、午前中にも関わらず、だし巻卵を肴に熱燗で一杯飲み、いつものようにきつねうどんを食べる。昼前にオランダ航空機に乗り込む。睡眠薬を飲んで、眠って帰ろうとするが、日本に来るときほどは眠れなかった。
アムステルダム経由で、ロンドン・ヒースローに着いたのが、夕方の六時ごろ。日本では翌朝の二時である。車は事故で大破したままなので、ヒースロー空港でレンタカーを借りる。今回は、ちゃんと住所入りの地方税の督促状と、所得税の計算書を持っていたので、問題なく車は借りられた。慣れない車と、眠気に注意しながら、夕方のラッシュの中を一時間以上運転して家に戻る。
数時間眠った後、翌日の六時半に家を出る。ツネボンが泊まっているヒースロー空港近くのホテルに彼を迎えに行く。ホテルのロビーで、二十年ぶりの再会。
「ごっつう久しぶり、元気そうで何より。」
二人で肩を叩き合う。彼は前夜ロンドン市内まで、ミュージカルを見に行ってきたという。
僕のレンタカーでターミナル四まで行き、チェックインを済ませた後、レストランで「イングリッシュ・ブレックファスト」を食べながら、ふたりきりの同窓会が始まった。こうして、会いに来てくれる人がいるのは本当に嬉しい。積もる話は尽きないが、彼は九時過ぎに搭乗口に消え、僕は一週間ぶりにオフィスに向かった。
九月、これも小中高と同級生だったヨーコの息子さんのハヤトとチナツが遊びに来てくれた。