漬物を買いに

 

居酒屋「伏見」のメニュー、どれもボリューム満点。ぜひお試しあれ。三条京阪から東へ五十メートル。

 

ユーコと別れ、生母の家に帰って寝たのが零時半ごろ。結構飲んだので頭が重い。それでも五時半に目が覚める。これが時差ボケ。プラス二日酔い。鴨川まで行き、北大路橋から出雲路橋まで歩いて、食欲を回復させる。日本を発つのは明日。良い天気、台風が沖縄の近くまで来ているらしいが、それが本土に近付く前に、日本を出発できそうである。

妻に頼まれた漬物を千本通りの有名な漬物屋に買いに行く。漬物屋の主人が、

「今日は、寒うもなく、暑うもなく、爽やかですね。」

と言う。本当にその通り。すぐき、柴漬け等、漬物を十種類近く買う。妻は石川県の出身だが、漬物は京都が最高だという。ここの店は、入るなりお茶を出してくれ、お茶を飲みながら漬物を試食できる。香ばしいお茶と、酸っぱい漬物、これがよく会う。

 父は物を残す人で、切手の他にコインも大量に残していた。穴の開いていない百円玉とか、大きくて穴の開いている五十円玉とか、大きくて穴の開いていない五十円玉とか。今も使えるかどうか分からないが、ともかく日本政府の発行したものである。切手は、どうにもならないが、硬貨は額面で換えてくれるだろう。僕は、その硬貨の袋をK銀行に持ち込んだ。使えるものと使えないものを区別するのに、二時間ほどかかるという。僕は終わったら連絡してくれるように頼み銀行を出た。

 帰り、不動産屋に立ち寄り、家の査定書類を受け取る。「仲介」と「買い取り」でふたつの価格が出ている。「仲介」とは不動産屋は買手が現れるまで待ち、それから売買契約を取り持ってくれるもの、「買い取り」とは買手があろうがなかろうが、まず不動産屋が買い取ってくれるというもの。当然、「仲介」の方が、二割ほど値段が高い。それを継母に見せるが、継母は僕と姉に任せるという。姉に電話をして、査定の結果を伝え、

「後はよろしくね。」

と頼む。

 昼過ぎ、父の家の片付けもほぼ終り、生母の家に戻りしばしウトウトする。寒くもなく暑くもない気候。風の通る部屋でまどろんでいるのは気持ちが良い。銀行から電話があり、硬貨は一万数千円の価値があるとのこと。その金を取りにいく。父も貯めこんだものだ。

夕方船岡温泉に行き、生母の作った夕食を食べた後、自転車に乗り継母の家に別れを告げに行く。帰りに父の家に入る、家が思いの外早く売れてしまえば、この家に入るのもこれが最後になるかも知れない。過去に対して、比較的未練なくサヨナラを言える性格の僕だが、家が早く売れて欲しいような、売れて欲しくないような、複雑な気持ちになる。

生母の家への帰り道、僕はまた歌を唄いながら、自転車を漕いだ。

「話しかけるように

揺れる柳の下を

通った道さえ今はもう

電車から見るだけ」

 

早朝、出雲路橋から鴨川を望む。今日も天気が良さそう。