原色の世界

 

今日も朝から外食、贅沢う〜。

 

十二月二十六日、朝起きてひとりで海岸通を散歩する。海岸通のベンチに座っている中年の男性と目が合ったので「ハロー」と挨拶する。英語で言葉を交わしているうちにお互い日本人だと分かり、僕も彼の横に腰掛けて日本語で十五分ほど話をする。彼、ササキさんは某自動車部品メーカーの工場長として、単身赴任しておられるとのことだった。

「現地人に技術移転をしようとしてるんですが、中国系の人は覚えも早いんですが、その他の民族はなかなか覚えてくれなくて、困ってます。でも平等に雇わないといけないんです。」

とのこと。マレーシアでは、少数の中国系の住民が、経済の実権をほぼ握ってしまったことから、現在マレー系の住民に、優先的にチャンスを与える政策が取られているという。

今日も朝ごはんから外食。「コーヒショップ」へ五人で行き、そこで朝粥を食べる。アラタは朝からワンタンメン。僕とチズコはチキンライスを追加する。

アパートへ戻ると、ジェイソンが今日は、「ケク・ロク・シー」に連れて行ってくれると言った。

「それ何?それ何処?」

と聞くと、彼は僕をエレベーターホールへ連れて行き、山の中腹を指した。そこには何か大きな瓦葺きの屋根のようなものが見える。

五人で車に乗り、「ケク・ロク・シー」が近付いてくるにつけ、段々とその様子が分かってきた。大きなお寺なのだ。漢字で書くと「極楽寺」。山の斜面を利用して、広大で、高低差のある伽藍が広がっている。車を置いて登って行くと、途中にはケーブルカーまであった。立っている観音像は高さ三十メートルはあるだろう。とにかく、大きなお寺だった。

そして、その色使いがすさまじかった。原色の世界。とにかく目がチカチカするほどの色合いだ。僕は「千と千尋の神隠し」の神様の集まる旅館を思い出していた。

「この色はあんまりやで。マレーシアの中国人は、『わびさび』を理解せんのかいな。」

とチズコに言う。

「極楽寺」を出てから、ジェイソンが、

「ビーチへ行こう。」

と言い出した。二十分ほど海沿いに走る。結構高級そうなホテルの駐車場に車を停め、そのホテルのロビーとプールを横切って砂浜に出る。白い砂の結構きれいな砂浜。海水に足を浸してみて、

「ぬるう。」

と叫んでしまう。さすが赤道直下、北緯五度。本当に、海の「水」は「ぬるま湯」のような温度なのだ。もうちょっと冷たい方が、泳いでいて、身体がシャキッとして気持ちが良いのだが。

砂浜に面したカフェに陣取り、子供達は波と戯れ、大人たちはビールを飲みながら、子供達が遊んでいるのを眺めていた。

 

目がチカチカするくらいの原色の世界、極楽寺。