クリスマス・コンサート
広いリビングルームで思い切り遊ぶ子供達。
子供達は「大広間」におもちゃを広げて遊んでいる。広いので散らかし甲斐があるというもの。
五時ごろにふたりを連れて、下の「公園」に行く。「公園」と言っても、アパートの住人だけが使えるものだ。手入れの行き届いた芝生で、遊んでいるのは僕達だけ。結構大きなプールやテニスコートもある。まったくもって、贅沢な環境だ。
チズコが呼びに来て部屋に戻る。ジェイソンが帰宅していた。
「ハロー、ジェイソン、久しぶり。」
今日はこれから「くるくる回るレストラン」で食事をして、その後、クリスマスコンサートへ行くことになっているとのこと。
ジョージタウン(ペナンの首都)の中心にあるホテルの屋上の、円形のレストランは、確かにゆっくりと回転していた。そこでユミコさんと、彼女のふたりの息子さんと待ち合わせていた。ユミコさんの息子さん達は、アラタとオリバーと同じ学校、幼稚園に行っているとのこと。ビュフェット(日本でいうバイキング)形式だったので、四人の子供達は何度も「おかわり」をしている。
夕食の後、すぐ傍の「イースタン・アンド・オリエンタル・ホテル」のボール・ルーム(社交ダンスのための大ホール)で行われる、クリスマスコンサートへ行く。おそらくペナンでは最高級のホテル、いわゆる「コロニアル風」の建物である。「歴史」と「威厳」を感じさせると同時に、「支配」と「差別」をも感じさせる。
僕達は二階のバルコニーに席を取った。下を見ると、聴衆も半分以上が白人だ。第二次世界大戦前の植民地を舞台にした映画、例えば「アラビアのロレンス」とか「インドへの道」とか「愛と哀しみの果て」(アウト・オブ・アフリカ)とかの一シーンの中にいるような気がする。
合唱団とオーケストラによるコンサートの演目は、殆どクリスマスキャロル。僕の子供達が小学生だった頃、英国の学校の「クリスマスコンサート」で散々聞かされ、耳に馴染みのある曲ばかりだった。
明日はクリスマスイブ。嫌が上にもクリスマス気分が高まる、かと言うとそうでもない。何かが違う。やはり「夏のクリスマス」だからだろうか。「暑いクリスマス」は初めてではない。僕は、三年前のクリスマスをガダルカナル島で迎えたことを思い出した。
Tシャツと半ズボンで迎えるクリスマス、チズコに言わせると、いまだにピンと来ないという。
「やっぱり、クリスマスは寒くなくちゃ。」
と彼女は言う。
地元のアマチュア・オーケストラは結構レベルが高く、「皆で歌いましょう」コーナーや、子供達による指揮の体験などもあって、コンサートはなかなか楽しめた。
オーケストラも合唱団も観衆も半分以上が白人。