日本人の奥さんの活動について
格調高い、イースタン・アンド・オリエンタル・ホテル。
サンタクロースに扮した男性が、聴衆の子供にお菓子を配った後舞台に上がり、オーケストラを指揮させてもらっている。その後、三歳くらいの子供が指揮をしたのも可愛かった。ユミコさんは、
「来年は、聴くだけじゃなくて、自分も合唱団に入って歌いたいわ。」
と言っている。
「いい考えですよ。絶対そうしてください。」
と僕も勧める。せっかく外国に住むのだから、「日本人の奥様社会」に属するだけではなく、現地の人と一緒に何か活動をすることは、とても良いことだと思う。
彼女の下の息子さんが、お母さんの膝枕で眠りだした。僕も昼寝をしていなければ、絶対眠っていたと思う。
「モトさんも眠そうですね。」
「僕も眠ったら、膝枕してもらえますか。」
と言うと、変な顔をされた。わあ、「変なおじさん」と思われたかも。冗談ですよ。
コンサートでクリスマスキャロルを聴いていると心が和む。旅行中、移動中は結構緊張していたので、良いことだ。子供達はなかなかじっとしていない。いつの間にかどこかへ逃げ出している。それに気付いたジェイソンが子供達を連れ戻すことが何回か繰り返される。お父さん業も大変だ。
食事のとき、ユミコさんがチズコのことを、
「常にぎりぎり忙しく働いて働くことに慣れ、暇だとかえってストレスを感じる人。」
と評した。僕も彼女からそれを感じる。マレーシアではメイドを雇えば家事や子守をやってくれるし、基本的に暇はある。しかし、この小さなペナンの社会では、暇な時間があっても、やることが余りにも限られているのだ。また、人間、限られた時間に、時間を見つけてやるからこそ、能率が上がるということも言える。
「時間があるのにやることが見つからない。」
チズコがメールに時々そう書いてくるのを読んで、最初「何と贅沢な」と思った。しかし、ここへ来て、彼女の言うことが分かったような気がする。最近は、語学をやったり、ドラムをやったり、ボランティアをやったり、彼女なりに努力はしているようだが、それにしても、ここは余りにも田舎で、狭い場所なんだ。
帰り際、チズコがボランティアをしているIWA(国際女性協会)のメンバーのひとりが、
「明日うちでパーティーをするから来てね。英国からのお客さん(僕のこと)もご一緒に。」
と言われた。
十時過ぎにアパートに戻る。冷蔵庫からビールを一缶出して飲む。本当に色々なことのあった一日だった。今朝、まだKLを発ったばかりだとは信じられない。今日は四十八時間くらいあったような気がする。
小さな男の子がオーケストラを指揮する。拍手大喝采だった。