ペナン到着
空港とは思えないざっくばらんな雰囲気のLCCT。
部屋に入りまずシャワーを浴びる。寝る前に冷たいビールが飲みたい。そう言えば、一階のロビーの横に「コーヒーショップ」があった。
「でも、『コーヒーショップ』だし、『イスラムの国』だし、おそらくビールはないだろうな。」
と全然期待しないで、エレベーターでまた下に。コーヒーショップに入り、メニューを見る。メニューにはビールは載っていない。もう真夜中近く。客は僕ひとりだ。
「やっぱりだめか。」
「ダメモト」で、白いブラウスと黒いタイトスカートのウェートレスのお姉さんに、
「ビールある?」
と聞いてみる。何とハイネッケン・ビールがあると言う。値段を聞かずに注文。
「食べるものある?」
と更に訪ねると「ヌードル」があるという。冷たいビールと温かいウドンで、僕の心はやっと落ち着いた。暗くなってからの宿探しというのは、もう余りやりたくない。
十二月二十三日、五時半にモーニングコールがかかる。五時間しか眠っていないが、かなり熟睡したので、気分はすっきりし、かなり肯定的に物が考えられるようになっていた。
昨夜の「コーヒーショップ」に朝食に行く。パンやコーヒーの他に、白いご飯という選択枝もある。これは有り難い。ご飯にキュウリの輪切りを乗せ、その上に干し魚を乗せ、赤い唐辛子の入った醤油をぶっかけて食べる。結構美味くて、更に元気が出る。
タクシーが六時に迎えに来る。昨夜チェックインの際に頼んでおいたのだ。タクシーは英国人の若いお姉さんと乗り合い。格安航空会社「エア・アジア」のターミナル、「LCCT」へ向かう。同乗者の女性はとてもきれいな人、職業を尋ねると「スタイリスト」だと言う。モデルかと思った。
「LCCT」に到着。そこはどう考えても飛行機のターミナルという雰囲気ではなかった。「スラムドッグ・ミリオネア」の映画に出て来る、インドのムンバイ(ボンペイ)の駅を思い出す。アジア的なカオスの支配する場所だった。
タクシーの運転手が僕らふたりに五十リギットずつ要求したが、同乗の英国人のお姉ちゃんが納得せず、
「ふたりまとめて乗せて、あんたも得したんだから、ちょっとはまけなさいよ。」
と交渉している。彼女のおかげで十リギット戻ってきた。
自動チェックイン機で搭乗手続きを済ませ、列に付き、荷物を預ける。列のあるところ必ず割り込みがあるのがアジアらしい。KLからペナンまでのエア・アジアの切符は、英国からインターネットで購入していた。わずか四十五分のフライト。飛行機はリクライニングしないギュウギュウ詰めの座席。スコールで出発が少し遅れたが、ペナンには予定通り、九時半に着いた。目的地はもうすぐだ。
雨の中、急いでペナン行きの飛行機に乗り込む。バスターミナルのような空港だ。