KL不安な宿探し
キノコのような積乱雲を避けながら飛行機は飛ぶ。
飛行機が離陸する直前にスコールが始まった。飛行機は、スコール雲を避けるように上昇していく。コタ・キナバルからクアラルンプール(KL)まだは二時間。だんだんと飛行機の窓の外が暗くなり始める。今日は朝から乗り物の中で座っている以外、ほとんど何もしていない。それなのに、何故かすごく疲れている。KLではホテルを予約していない。着いてからのホテル捜し。直ぐに見つかるかが心配だ。
午後七時十五分、飛行機はKL国際空港に着陸する。着陸寸前に、最後に残っていたオレンジ色の雲が地平線の向こうに消え、完全に夜になった。飛行機を降り、かなり長い間歩いた後、更にバスに乗って別のターミナルに向かう。
入国審査の長い列を見たとき、思わず倒れ込みそうになった。「マレーシア人以外」のカウンターの前には、七十人から八十人の人が並んでいる。また、その人達のほとんどは、は中近東から来たと思われる、肌の黒い人なのだ。女性は皆ベールを被っている。中近東の人達は、入国審査に特に時間がかかるのだ。(理由は言うまでもないだろう。)
事実、列は遅々として進まない。リュックサックから本を出して、読みながら待つ。飛行機の隣の席に座っていた日本人男性が、
「こんなに時間がかかると、荷物は先に出ているはず。それが勝手に片付けられ、後で探すのは一苦労なんですよ。」
などと不吉な話をしている。
並ぶこと四十五分。その間に二十ページは本を読み進んだ。九時前にやっと入国審査を通過する。荷物を取りに行ったが、僕の乗った飛行機はもう案内板にも出ていない。つまり、乗客はとっくの昔に荷物を持って外に出て、家に帰って風呂にでも入っていると思われているのだ。
自分の荷物を探すこと十五分、やっと見つけて外に出る。次はホテル探し。ホテルのインフォメーションの場所を教えてもらい、
「明日早く別の便に乗るので、とにかく空港の近くのホテルを探している。」
と言う。一泊二百九十リンギットのホテルが紹介された。それが高いのか、リーズナブルなのかも分からない。もう十時近い。僕は疲れ果てていた。とにかく今は、どこでも良いから早く寝たい。
ホテルのインフォメーションの向かいで、タクシーのクーポンを買って、タクシーに乗り込む。「前払い」、これは良いシステム。大抵の発展途上国では、着いたばかりの旅行者はタクシーの運転手の絶好のカモ、大抵ぼられるから。
ホテルは「空港の近く」のはずなのだが、タクシーはどんどん走り続ける。
「どこまで行くのだろう。」
「暗い」、「知らない場所」、「疲れ」で僕はかなりナーバスになり、楽観的に考えられなくなっている。十一時前、やっとホテルに到着。そこは、結構まともなホテルだった。
着いたホテルは結構まともなホテルだった。でも7時間しか滞在しなかった。