オクラホマ州
楽屋に集うオクラホマの娘たち。(写真提供、川合スミレ)
このミュージカルには一九〇六年当時の社会的な背景も描かれている。それは、オクラホマのアメリカ合衆国加盟、つまりオクラホマが「州」となることだ。
「オクラホマも新しい時代を迎える。これを機に、農民も、カウボーイも一体になって、オクラホマの発展に尽くそう。」
というのが、ラブストーリーと共に流れるもうひとつのテーマと言えるだろう。
「そもそもオクラホマってどこにあるの。」
と合衆国の地図を広げてみる。真ん中の少し下、大きなテキサス州の上にちょこんと乗っている感じで存在する。オクラホマが合衆国の四十六番目の州になったのは二十世紀になってから、一九〇七年のことであった。つまり、それほど田舎だったわけだ。
しかし、そんな片田舎の州の割には日本での知名度は非常に高いと思う。それは、とりもなおさず「オクラホマミキサー」に負うところが大きいと思う。中学や高校の頃、運動会やキャンプでよくやったよね、フォークダンス。
「あこがれのヨーコちゃんの手を握るのに胸がときめいたよなあ。」
「藁の中の七面鳥」のメロディーを聴くと、ティーンエージャーの頃にタイムスリップし、条件反射的にステップを踏むのは僕だけ?あと数人で「あこがれのヨーコちゃん」の手を握れるのに、直前で音楽が終わってしまったあの悔しさは、今も忘れることができない。
話を舞台に戻そう。村の学校の建設資金を募るため、オークションが行われる。「競り」に出されるのは、村の娘の作ったお弁当の入ったバスケット。それを村の若者が競り落とすのだ。カーリーとジャドはローリーのバスケットを競り落とすために有り金をはたく。カーリーはカウボーイの命とも言うべき、馬、鞍、拳銃を売り払い、その金でローリーのバスケットを競り落とす。
すったもんだの末、カーリーとローリーは結婚式を向かえ、農民とカウボーイの間には団結の機運が高まる。シェークスピアの昔から、「喜劇」の終幕は「結婚式」と決まっている。しかし、この話はそれで終わらない。その結婚式の場にひとりの乱入者が現れる・・・
オーディションで選らばれた学生さんは、歌や演劇の経験者なのだろう。歌や踊りをそつなくこなしている。バレーのステップを踏むシーンでは、永年バレーのやっていたスミレは格段に上手い。女の子にダンス経験者が多いのか、概して男の子よりずっと上手だ。
驚いたのは、キャストがスミレを除くと、全て白人だったこと。ペルシャ人のジプシーの役も、白人の子がメイクをして演じている。ロンドンの学校ではこんなことは考えられない。必然的に中国系、インド系、アフリカ系の人々が混じっている。スミレがダーラムは「キリスト教社会」で「白人社会」だと言っていたのを思い出した。
もうひとつ驚いたのは、皆が並ぶとスミレだけ頭一つ背が低いこと。しかし彼女は百六十センチくらいの身長はある。いかに周りの皆さんの発育が良いかが分かるというもの。しかし、スミレはその背の低さと黒い髪でかなり目立っていた。
大道具のメンバーも周到な準備に余念がない。(写真提供、川合スミレ)