西海岸へ
久しぶりに絵を描く。絵を描いていると時間があっと言う間に経つ。
ニュージーランド滞在中、二度「スカイプ」で英国の家族と話した。
「こっちは天気が良いよ。セミが鳴いているし、日焼けして真っ黒だ。」
と言う。末娘は、
「こっちは雨ばっかり、私は風邪ひいてるし、職は決まらないし、金はないし。」
とブツクサ行っている。真ん中の娘が聞いてきた。
「パパ、毎日パンツ替えてる?」
ネルソンの市場で味噌を売っていた若いカップルが遊びに来られた。ご主人は調理師だったが、味噌を作った経験はなく、試行錯誤の上に商売になる味噌に辿り着いたとのこと。彼らと話していて思ったこと。何事も決断したら、その決断が良い決断になるように精一杯努力する、それが肝要。「正しい決断」は自分で正しくするしかないのだ。
草刈りの他に、絵を描くことを始める。最初の絵は、シローとラニの家の水車小屋。書いた絵は、彼らの農場に僕が足跡を残した記念に進呈した。
炭焼きの窯は、白い煙を出し続けている。その煙の臭いが辺りを漂っているが、炭を焼く煙の臭いというのは、悪くない。窯の下からの管からは、ポタポタと褐色の液体が落ちている。これが木のエキスなのだろう。舐めてみると、煙臭いが、ちょっと酸っぱくて、これも悪い味ではない。
ニュージーランドにいる間に、もう一度旅に出ることにする。前回は東海岸だったので、今回は西海岸へ。普通の日本人旅行者なら、事前にあれこれガイドブックで下調べをするのだろうが、僕は、
「西海岸は雨が多い。」
「西海岸はサンドフライが多い。」
そんな予備知識だけ。
金曜日の朝早く出発、まずは、西海岸の北では比較的大きな町、ウェストポートまで行くことにする。マーチソンという場所まで一時間半。そこから曲がりくねった道をウェストポートへ向かって走る。三百キロ程度の道だが、独りで運転するとどうしても休憩を入れなくてはならない。四時間半かかって、ようやくウェストポートに到着した。ここには高速道路もない。どこへ行くにも、ひたすら曲がりくねった山道を走るしかないのだ。今回も、道路のほとんどが川に沿っている。途中から道路と並行して、ニュージーランドでは珍しい鉄道の線路が走っている。かつて炭鉱があったらしい。案の定、西海岸に近付くにつれて雲が多くなり、時々にわか雨に降られる。
ウェストポートに着いたのは昼過ぎ。スーパーで昼食を買って、灯台の下で食べる。そこからアザラシの繁殖地へ。二十匹くらいのアザラシがいる。展望台から見下ろすような形でアザラシを観察する。カイコウラのようにすぐ近くまではいけないけれど、より自然なアザラシの姿が見られて面白い。
レンタカーを代えに行ったネルソンの街で。丘の上の教会が良い雰囲気。