コミュニティー・ランチ
ハンマー・スプリングスからの帰り道、「ミニ・ナイアガラの滝」を見る。
ハンマー・スプリングスで目を覚ました。午前六時半、少し薄暗い。カーテンを開けると霧雨。昨日あれほどくっきりと見えた対面の山々が、今日は全く見えない。考えてみれば、一昨日は海が正面に見える部屋、昨日は山が眼前に広がる部屋。二日続けて「眺めの良い部屋」に泊まったことになる。朝飯にインスタントラーメンを作って食べる。久しぶりに食べるとこんなものでも美味い。モーテルの中には、簡単な自炊施設がついているものもある。これは大変助かる。
天気が悪くて、良い景色が望めそうにないので、早々に引き揚げることにする。午前九時にはハンマー・スプリングスを出発。山を越えてネルソン方面へと向かう。最初は山が雲で隠れていたが、走るうちに天気が回復し、また山の頂きが見えてきた。途中、滝を見学する頃には元通りの良い天気。モトゥエカもいつものように晴天。着いた時間がまだ早かったので、マラハウという海岸に行き、しばらく砂浜でごろ寝をする。
水曜日、リバーサイド・コミュニティーでランチを食べることができるというので行ってみる。昼食そのものより、そこに集まって来る人たちと話をするのが面白いと思ったからだ。さて、先にも書いたが、ここで言う「コミュニティー」とは、「同じ目的を持った人たちが一緒に生活している場所」ということになる。リバーサイド・コミュニティーには宿舎があり、農場があり、牧場があり、そこで「セルフ・エフィシェンス(自給自足)」、「オルタナティブ・ライフスタイル(もうひとつの生き方)」を目指す数十人の人たちが、一緒に生活しているとのこと。しかし、それらが具体的にどのようなものであるのか、はっきりとは分からないまま、僕はリバーサイドに向かった。ランチは午後十二時半から始まるという。
十二時過ぎに、コミュニティーの食堂へいくと、厨房では、七、八人の人々が食事の準備をしていた。
「コミュニティー・ランチに参加したいんですけど。」
と言うと、
「あなた初めて?どこから来たの。」
と聞かれる。日本からだというと、
「お〜い、あんたと同じ国の人が来てるよ。」
という声が飛び、最近コミュニティーで生活を始めた、Mさんという若い女性を紹介された。彼女もこのランチ準備係のメンバー、忙しそうに働いている。
コミュニティーに住む人々は、普段はめいめいで食事を作っている。この水曜日の昼食だけが、住人が集まって食事をする機会だという。そして、そのときに、外部の人間も参加してよいわけだ。食事の前、参加者が手をつないで輪になる。そのときは三十人くらい。年配の人もいれば、働き盛りの人もいれば、若者もいれば、子供もいる。皆で歌を唄う。その歌が終わってから、
「いただきま〜す。」
カヤックの旅が終わって、マラハウの浜に帰って来た人々。