「タウン」と「シティー」の区別

 

電光掲示板にプラットフォームの番号が現れるのを待つ人々。

 

三人とも九時前に切符売場の前に顔を揃えた。「早起き三人組」は、早めに着いていたらしい。切符手配係のノリコより切符が渡される。ホームが決まるまで、大きな電光掲示板の前で待つ。英国の鉄道の駅では、直前になるまでホームの案内が出ないのだ。客は、電光掲示板の前でボサッと待っている。ダイヤが組まれている以上、ホームは絶対に最初から決まっていると思うのだが。どうして「秘密」にするんだろう。

英国に来てからまだ数ヶ月のマコトに、

「プラットフォーム、『九と四分の三』へ行った?」

聞いてみる。それは「ハリー・ポッター」の小説に出てくる架空のホーム。ホグワース魔法学校に行くための「ホグワース・エクスプレス」が出る場所だ。もちろん、魔法界の人間(?)しか利用できなくて、常人には見えないのだが。最近は観光客を当て込んで、駅が標識を揚げているのだ。

「近くまで行ったんですけど、工事中のようでした。」

とマコトが言った。

ホームが決まり、三番線からケンブリッジ行きの急行に乗り込む。先ほども書いたが、ノリッチは、ロンドンから、北東、右上の方向にある。直通列車はなく、ケンブリッジで乗り換えだ。僕らが乗った「ケンブリッジ・エクスプレス」はケンブリッジまでどこも停まらない。

キングスクロスを出て間もなく、列車はサッカーチーム「アーセナル」の本拠地「エミレーツ・スタジアム」の前を通る。

「来週、ここでやる試合を見に行くんですよね。」

とサッカー好きのマコトが嬉しそうに言った。英国は歴史好きの人達だけでなく、サッカー好きにも楽しい場所らしい。

列車はロンドンの街から郊外に出る。線路の両側は野原か牧場になる。地面は霜で真っ白だ。

四十五分でケンブリッジに到着。ここまでは電車だったが、ノリッチ行きのジーゼルカーに乗り換える。ここからまだ一時間半かかる。

途イーリーという小さな町を通る。この小さなイーリーにも「カシードラル」つまり「大聖堂」があるという。列車の窓から結構立派な建物が見える。大聖堂とはすなわち「司教」の居る場所「カテドラ」のある教会なのだが。

「大聖堂がある場所は、どんなに小さくても『タウン』ではなく『シティー』なんです。」

とノリコが厳かに言った。

「ええっ、と言うことはここも『シティー』なの?冗談やろ。」

しかし、ちらりと、見ただけでだが、教会があり、運河があり、緑が多い、可愛い街だ。ぜひ改めて一度行って見たいと三人とも同じことを考えた。

 

ルンルン、遠足気分のマコトとノリコ。