パーティービーチ
パーティービーチに集う若者たち。
次の目標は「パーティービーチ」だ。観光案内書によると、ミコノス島には、若者が集まり、徹夜で飲んで騒ぐ、そんなビーチがあるという。息子のワタルは、そんな場所が大好き、タイやその他の国でも、そんな場所に行っていた。ミコノス島には「パラダイス・ビーチ」と「スーパー・パラダイス・ビーチ」という、ふたつの有名な「パーティービーチ」があるとのこと。妻とふたり、後学のためにそこを訪れてみようというわけだ。
「パラダイス・ビーチ」という標識に沿って車を走らせる。道は海岸へと向かってはいるものの、道幅がどんどん細くなってくる。周囲に家や人影が見えない。
「本当にこの道で合うてんのかなあ。」
と僕が言う。
「随分、ひなびた所へ来ちゃったわね。」
と妻。しかし、実際、道は合っていて、道路の終りに「パラダイス・ビーチ」の駐車場があった。
駐車場に車を停め、塀の向こうのビーチに出てみる。
「なるほど。こんな所だったのか。」
海岸に沿って、数件の結構大きなバーが並んでいる。その周辺は屋根が付いている。その屋根の下にテーブルが並んでおり、バーやテーブルでは若者がたむろして、ビールや、何やら色取り取りのドリンクを飲みながら楽しげに話をしている。バックには大音量のロック・ミュージック。(妻に言わせると、これでもまだ静かな方だとのこと。)言わば、街中のディスコ、英語でいうクラブが、砂浜に引っ越してきたようなものだ。女の子はビキニの上に極薄のワンピースかブラウスを着て、皆しっかりと化粧をしている。
しかし、僕達夫婦以外は、全員が若い息子や娘の世代ばかり、と思ったら、いましたよ、もう一組中年のカップルが。彼らも何となく場違いそうな顔をしている。
「この場所、気に入りました?」
と男性に英語で聞いてみる。
「いや、とても良い場所なのに、こんな風になってしまったのが残念です。」
とスイス人の彼は答えた。ビーチの後ろの斜面に立っているペンションを指差し、
「あんなところに泊まったら、一晩うるさくて寝られやしない。」
と更に彼は言う。まあ、この場所に来る人々は、一番中眠ることなんか考えないのだろうね。
おじさんおばさんにとって、居心地のよい場所でないので、早々に立ち去ることにする。
「『パーティービーチ』がどうしてこんなに人里離れた場所にあるのか分かったわ。」
と車に乗り込みながらマユミが言う。
「僕も分かった、ここは、周りに家がなくて、一晩中ドンチャンやっても苦情が来ない場所なんや。」
海の色が翡翠を思い出させる。