ヨーロッパ人の休暇と日本人の休暇
ちょいちょい遊びに来てくれた猫さん。
荷物を置いて、Tシャツとショーツに着替え、宿の前にある石段を降りて、砂浜に行ってみる。数軒のカフェとタヴェルナ(食堂)があった。すぐ近くに巨大な客船が停泊している。波は穏やか。海に足をつけてみると、水はまだ結構冷たいが、泳げないことはない。実際、数人だが水に入っているのが見えた。
売店でビールとミネラルウォーターを買い、部屋に戻る。部屋に居ると、開けたドアから、一匹の三毛猫が入ってきた。いつも思うのだが、ギリシアの猫というのは、どれも皆スキニーだ。友人でドイツ人の猫おばさん、カロラの猫は皆ポチャポチャしているのに。
まだまだ時間があるので、島の「首都」、ミコノスタウンまだ行ってみることにする。クリスティーナの話によると、町までは二キロ半、歩いて三十分くらいだという。
海岸に沿って歩く。道端にはアザミが生えている。ギリシアのアザミには球形の花を咲かせるものがある。しばらく行くとバス停があり、数人の観光客と思しき人達がバスを待っていた。バス停は黒板になっており、そこには白墨でバス時間が書かれている。簡単かつフレキシブルな方法だと感心する。
「あんたたち、カナダから来たのかい。」
とバスを待っているグループの一人が聞いてきた。どうしてそう思ったかと尋ねる。
「僕達、カナダのトロントから来たんだけど、アジア人が沢山住んでいるんだよね。」
もう、理屈にも何にもなってない。バスに乗るのかと聞かれたので、町まで歩くと答える、町までは四キロ半あるとカナダ人は言う。四キロ半と言うと一時間かかる計算。クリスティーナの言っていた倍近くある。でも僕達は歩くことにした。
三十分ほど海岸に沿って歩く。白い建物が密集したミコノスタウンが近づき、右側は船着場。船着場のバス停で降りてきたのは、先ほどのカナダ人達。
「お〜い、バスでも歩いていも、着くのは一緒だったね。」
と僕は彼らに向かって叫んだ。かかった時間は三十五分。距離は二キロ半が正解だった。
ミコノスタウンは、白い家が狭い路地に沿って建っている迷路のような街並。昨年訪れた、クレタ島のハニアの街によく似ている。
「オールド・ポート」(古い方の船着場)で出会った日本人の旅行者と少し話をする。東京から来られた女性二人で、お母さんと娘さんだという。サントリーニ島からフェリーでミコノス島に着いたばかりで、ミコノス島には二泊される予定とのこと。こちらには何泊するのかと聞かれたので、七泊と言うと、
「まあ、そんなに長く。その間何をされるんですか。」
と更に訪ねられる。
「散歩したり、本を読んだり、ゴロゴロして。」
と僕が答えると、ふたりの女性は不思議な顔をしている。「何もしないのが休暇」という考えは、まだ日本人には受け入れ難いもののようだ。
これがミコノス島のバス停。雨が降らないので、チョークで書かれた時間が消えることはない。