青い海と白い波
娘のソフィーは母親の日記を盗み読み、自分の父親候補三人に結婚式の招待状を送る。
「プリンス・オブ・ウェールズ劇場」は、レスター・スクエア駅から歩いて二分の場所。まだまだ時間があるので、劇場の前のパブに入り、赤ワインを注文する。開演を待つ人が入っているのか、パブは混んでいた。僕はワインよりもビールを好むのだが、ビールだとトイレに行きたくなるといけないと思い、ワインにした。隣の席は三人日本人のお姉さん達。お喋りに余念がない。お話の内容から判断すると、三人とも宮崎駿のアニメがお好きらしい。
七時過ぎに、劇場の中に入る。結構近代的な内装で、ロビーもバーも広々としている。新しい劇場かと思ったが、何と、一八八四年、日本では明治初期の開場とのことで少し驚く。もちろん、何度も改装されているのだろうが。
客席は扇形で、その幅はこの前訪れた「ピカデリー劇場」よりも格段に広い。収容人員も倍くらいあると思う。今回はたった二十ポンドの席、さすがに後ろの方だ。しかし、奥行きの狭い、間口の広い劇場なので、後ろの席でも、それほど苦にはならなかった。「グリース」よりは人気があるのか、水曜日の夜にも関わらず、「満員御礼」とまではいかないまでも、それに近い入りである。
午後七時半、舞台が始まる。背景はブルー、白い波模様の証明が当たっている。
「なるほど、これで『エーゲ海ブルー』の海を表しているのね。」
舞台装置は極めて簡素で単純。円筒形を半分に切ったような、上から見ると三日月形の装置があるばかり。それが色々と角度を変えることにより、場面がドナの経営するホテルの中庭になったり、波止場になったり、教会になったりする。ホテルの部屋にもなったのだが、さすがにそれには無理があるように思えた。
ストーリーの紹介は、ウィキペディアによると以下のようになる。
「舞台はギリシア・エーゲ海に浮かぶ架空の島にあるホテル。ホテルのオーナーであるドナ・シェリダンと娘のソフィーは、親子二人で仲良く暮らしていた。
そのソフィーの結婚式が明日に迫り、招待客が船で島に到着しはじめる。ドナは古い友人のロージーとターニャを迎えに行き、久し振りの再会に大喜び。
一方ソフィーは自分の友人達にある計画を打ち明ける。ドナの日記を盗み読みした彼女は、自分の父親候補が三人いることに気付き、その三人の男性にドナの名前で招待状を送っていたのだった。ヴァージン・ロードを父親と歩きたいと願うソフィー。もちろんドナはこの計画を知らない。父親候補のサム、ハリー、ビルはそんな事情も知らずに、二十年ぶりにドナに会いに戻ってくる。」
最初から最後まで、次々と「アバ」の曲が歌われ、台詞はわずかである。そのわずかな台詞から、物語の展開を追わなくてはならない。これはちと難しい。映画の方が、説明が多かった。そして、その映画を先に見ているので助かった。