タパス
これがタパス。居酒屋のおつまみメニューにそっくり。色々楽しめて嬉しい。
タパスというのは、スペインの「おつまみメニュー」だ。小さな皿に少量の料理が乗っており、それを沢山注文して、ビールやワインを飲みながらつまむというもの。居酒屋で、「枝豆」、「もずく」、「酢だこ」、「冷奴」等小さな料理を何品も注文するのと同じシステム。僕の好きなパターンである。僕は、「沢山の小さな皿に少しずつ盛られた料理」というのが好きなようで、韓国料理で出される前菜の盛り合わせ、キムチやナムルも大好き。
ポレンサの街で、遅い昼食を取ったとき、ビールとタパスを何皿か注文した。運転はマユミに任せ、サン・ミゲルの大きいやつを注文。一口飲んで、
「プファ〜」
と声を出す。暑い中歩き回った後なので、ビールが美味い。マヨルカ島の気候は、本当にビールを美味しく感じさせる。
次にタパス、「イカのリング揚げ」、「コロッケの盛り合わせ」、「肉詰めナス」、「ソーセージと豆の炒め物」、「マッシュルームのニンニク炒め」、そんなものだったと思う。それを食べながら、いや、つまみながらビールを飲む。もう最高。コロッケの盛り合わせの中に、中が緑色のコロッケがあった。ジャガイモにホウレンソウが混ぜてあるのだ。なかなか美味しかった。
「今度自分でもやらないと。」
そう思って、ハタと考える。
「しかし、自分で料理を作れるというのは、良いことばかりなんだろうか。同時に悲劇でもあるような気がするんだけど。」
と僕はマユミに言った。妻も僕も、食べた料理の作り方をすぐさま分析することが癖になっている。材料は何か、味付けは何か、調理法は何か。しかし。それらを知ってしまえば、基本的に自分で作れることになる。わざわざ高い金を払って、レストランまで来る必要はないわけだ。パエリアだって、もう自分で作れるもん。しかし、そんな人間は、レストランに行っても、素直に出てくる食事を楽しめないのだ。
「こんなものなら自分でも作れる、しかももっと安く。」
「こんなものに高い金を払うのはアホらしい。」
とすぐに考えてしまう。これは一種の悲劇ではないだろうか。
今回僕達はアパートを借りていた。基本的には自炊である。英語では「セルフ・ケータリング」と呼ぶ。これだと滞在費が食事つきのホテルに滞在するより幾分安くつく。しかし、同僚のアツヨは、セルフ・ケータリングのホリデーは絶対嫌だという。
「休暇に来てまで、毎日料理を作りたくないわ。」
ということ。それも良く分かる。しかし、僕は違う。
「高い金を出して、不味いもの食うよりは、自分で美味しいものを作った方が良い。」
と考える。しかし、そう言い切ってしまったからには責任を取らねばならない。それで、ホリデー中の夕食は、いつも僕が作ることになっている。
フカフカして粉砂糖がかかったマヨルカ名産のパンを買ったマユミ。