バナナ、バナナ、またバナナ
バナナ畑は塀で囲まれているが、時々外にも垂れ下がっている、房の下に花の跡がある。
「ラ・パルマ島の主な産業は?」
と問われて、間違える人はいない。
「バナナ!」
ともかく、広大なバナナのプランテーションが、島の南側に広がっている。
最初の日、ホテルに向かうバスの中から、眼下に見えるホテルの両側に、白い長方形が幾つか見えた。最初、
「どこかの会社の倉庫なのかな。」
と思った。
翌日、ホテルから島の最南端の灯台へ行ったが、そのときにその「白い長方形」がバナナのビニールハウスであることが分かった。大きいものは、横五十メートル、縦二百メートルくらいある。その中に、何千本というバナナの木が植わっていた。バナナは海岸の平地ではビニールハウスで栽培されているが、斜面でも育てられている。そもそも、切り立った山がそびえている火山島のラ・パルマでは平地は殆どない。斜面では、段々畑、棚田のようにしてバナナが育てられている。斜面のバナナ畑はビニールに覆われていない。
「耕して天に至る」
孫文の言葉だが、それがピッタリ。僕は四国へ行ったとき、何度か高松から高知に通じる土讃線に乗ったことがある。そのとき両側の山々の頂上方まで、延々と段々畑が続いているのに驚いた。ラ・パルマでそれを思い出した。
「バナナ、バナナ、またバナナ!」
そう言いながら僕は歩いた。
今回驚いたのは、バナナの房の下に、結構大きなバナナの花がぶら下がっていたこと。それがただでさえ重そうなバナナの房を下へ引っ張っている。バナナの房ってずいぶん重いんでしょうね。たわわに実った木は、折れないように、Yの形をした鉄の棒で、地面から支えてあった。「バナナの木」と書いたが、物の本によると、バナナは「木」ではなく「草」なのだそうだ。木のように見えるのは茎で、一度花が咲き、果実がなると枯れてしまう。そして、根元からまた新たな茎が出てきて、次の花を咲かせ実を結ぶという。なるほど、バナナ畑の下を見ると、切られた古い茎の跡があちこちにあり、その横からは新たな芽が出ていた。
灯台へ行った帰り道、九キロの道を歩いて帰ったのだが、一時間くらいはずっとバナナ畑の間を歩いていた。また、山の上から見下ろすと、下の平地に何百というビニールハウスが太陽の光を反射していた。
さて、そのラ・パルマ島産のバナナの味だが、翌朝の朝食のときに試食してみた。まずバナナそのものが、英国のスーパーで売っているものの半分の長さしかない。食べてみると味もかなり違う。英国で買うバナナは甘みが勝っていて、酸味は余り感じない。それに対して、ラ・パルマのバナナは、酸味と甘みが同じくらい自己主張している。濃厚な味。美味しい。
溶岩で覆われた斜面を耕して天に至っているバナナ畑。