ニュージーランドへ行けるか
イズミとカズヨ。暑い日は生ビールが美味い。カズヨはお孫さんがいる。
間もなくイズミも現れ、彼女が予約しておいてくれた、四条堀川の「大人のお晩菜屋」へ行き、そこの二階に陣取る。今日は暑いので、イズミも薄着だ。彼女が痩せているのが分かる。今回だけではないが、京都に帰ると殆ど女友達とばかりに会っている。やはり僕は女性に対しての方がマメな性格のようだ。京都に帰って時々遊んでもらっていたG君は今ヨルダンにいる。
ビールを飲み、食事をしながら、前回三人が顔を合わせてから後の十数年の間にあった事をお互いに話す。良いことばかりではなく、楽しくない出来事も。本当にお互い、色々なことがあるものだ。それを全て話せるのが幼馴染というものだろうか。
「皆、それぞれ苦労をしながらも、一所懸命に生きているのだ。」
と思う。
カズヨにはもうお孫さんがいる、つまり彼女はお祖母ちゃんなのだ。それももうかなり大きい女の子らしい。イズミも僕も一番上の子供が二十四歳なので、もうそうなってもおかしくない。僕の義母は、「お祖母ちゃん」になったときまだ四十二歳だった。カズヨは前回孫を連れて帰国し、イズミはふたりに会っている。なかなか可愛い娘らしい。ハーフの若い女の子って、皆結構可愛い。
カズヨはこっちの心理を見透かして、それを暴いていくような能力がある。小柄で可愛い人なのだが、僕が最初に彼女の黒いワンピースから「魔女」という印象を受けてのは、結構当たっていたのだ。例えば、
「京都に戻っているときは、イズミのお姉さんのサクラさんの家に時々『ピアノを弾かせてもらいに』行く。」
と言うと、
「ケベ、それは単なる口実に過ぎず、本当はサクラさんに会いたいからでしょ。」
とカズヨが言う。否定できず、いや図星を突かれて一瞬戸惑うが、
「うん、そうかも知れない。多分そうだ。」
「そうなら、お姉ちゃんにもそう正直に言ったほうがええよ。」
と隣でイズミが煽っている。その辺りで出てきたヒラメの骨を焼いたつまみは、なかなか美味だった。
疲れで不整脈が出てきたので、十時にはふたりと別れて帰ることにする。
「ふたりとも、絶対、ニュージーランドに遊びにおいでよ。」
とカズヨが言う。
「イズミは出不精だから、僕が連れて行くから。」
とカズヨに言う。
次にこのメンバーで会うのは、ニュージーランドのカズヨの住む街であることを祈りながら。僕は二人と別れ、僕はタクシーに乗った。
みりんをつけて焼いたヒラメの骨。これは見事。