バイキングの日本侵略
昔住んでいた金沢のアパートの近くに古くからある飴屋(スウィート・ショップ)。毎朝前を通って大学に行っていたの。
京都にいる間は、夕方五時になると、洗面器にタオルと石鹸とシャンプーを入れて、母の家から斜め向かいにある「パブリックバス、船岡温泉」へ毎日通ったの。一九三三年から八十年以上営業しているこのお風呂屋さん、今ではすっかり京都の観光名所になった感じ。「ロンリー・プラネット」という、英語の旅行ガイドブックにも載っているから、外国人の客も多いんだよね。僕は、英語かドイツ語が話したくなったら、船岡温泉へ行くことにしている。必ず誰か話し相手がいるもん。
船岡温泉には色々な種類の風呂がある。露天風呂(屋外のお風呂)、ヒノキ風呂(木でできた浴槽)、薬湯(ハーブが入っている)、泡風呂(マッサージ効果がある)、電気風呂(電気椅子で死刑になる気分が味わえる)、水風呂、サウナ、打たせ湯(滝のようで肩と首に良い)、それにメインの浴槽。これらに順番に入っていくのが楽しいんだよね。一回の入場料が四百三十円。つまり、三ポンドちょっと。これで、何時間でも入っていられるのだから安いと思わない?
ある日、いつものように五時ごろに船岡温泉に行くと、特に外人さんが多い。二十人くらいのお客の半分以上が外人だった。露天風呂にたむろする体格の良い五人のお兄さんたちに、どこから来たのか尋ねてみる。
「ノルウェー!」
とのこと。結局、外人さんの大部分がノルウェー人だった。ひとりで居る外人さんがいたので、
「あんたもノルウェーから?」
と聞いてみると、彼はフランスからとのこと。
「日本の銭湯の、バイキングによる侵略だね。」
と彼は言った。
落語を聴きに行った翌日、僕は金沢へ向かった。金沢では、「イン・ローズ・義父母」と会うことになっている。義母が、
「金沢に着いたら何がしたいの?」
と聞かれたので、
「どこか広いお風呂に連れてって。」
と頼んでおいた。
義父母は僕の願いを叶えてくれ、金沢に着いた翌日、「スーパー銭湯・満天の湯」に連れて行ってくれた。義父母の家から車で十五分ほどの所にあるスーパー銭湯は、大きな建物で、広い駐車場が付いてた。お風呂だけでなく、レストランもあるんだ。風呂上りに一杯飲んだり、食事を楽しんだりも出来るんだ。
風呂の種類も豊富。船岡温泉に匹敵する。白湯(普通のお湯)、エステ湯(ブクブク泡が出ている)、サウナ、水風呂、スチームサウナ(何故か塩を身体にこすり付けて入る)、足湯、露天風呂、高濃度人工炭酸泉(!?)などがあるんだ。六百円くらいと普通の銭湯よりは少し高いけれど、一時間以上楽しめて、温まって、きれいになって、それでも僕は安いと思う。
銭湯を出た後、僕は義父母に、「回転寿司」連れて行ってもらった。タッチパネルで注文して、コンベアが寿司を運んで来る、百人くらい入れるハイテクお寿司屋。新しい物好きの日本らしいよね。
明るくて近代的な、金沢のハイテクお寿司屋さん。味も結構美味しいよ。