貴船
貴船川床のイメージ、京都観光案内HPより。
「どこか京都らしい場所へ行こう。」
昨年も同じ時期に、同窓会に合わせて日本に帰ってきたユーコとそういう話になり、昨年はで嵐電に乗って嵐山へ行った。今回、彼女は貴船へ行きたいという。貴船へ行くには、出町柳から叡電に乗って牛若丸で有名な鞍馬方面に向かい、終点のひとつ手前の駅「貴船口」で降りる。そこから、バスか歩きで行くのである。何故、そんなに良く知っているかというと、父が亡くなる前年、つまり一昨年の秋、十一月に父の見舞いで京都に帰ったとき、父が寝ている間に紅葉を見に貴船へ出かけたことがあったからだ。
「国際的飲み会」のある日の昼に、僕はユーコと叡電の出町柳駅で待ち合わせた。十一時半の電車で貴船口へ向かう。三連休の最終日、しかも良い天気とあって、行楽客で電車は混んでいた。僕たちは立っていた。二日前の土曜日に、同級生のミキ、ゴロー、スーサンたちと「山岳部」結成し、比叡山に登ったユーコは筋肉痛でちょっと辛そうである。マラソンを走った経験から言うと、筋肉痛は翌日よりも翌々日がひどいのだ。
貴船口で降りて、小さなバスに乗って、五分ほどで貴船に着く。貴船の名物は何と言っても「川床」。貴船川の流れの上に床が組んであり、その上で谷川の流れを見ながら、せせらぎの音を聞きながら食事をするというもの。暑い京都の夏をしばしの間忘れ、なかなか涼しい体験ができる。貴船へ着くと、京都の街中より気温が数度低いように感じされる。
ふたりで「川床」料亭のメニューを見る。一人前七千円くらいする。半分以上が「席料」と言っても、ちょっと食べる気にならない。どうせ今晩は「国際的飲み会」でご馳走を食べるんだし。それでふたりで、蕎麦屋に入り、「トロロ」の入った蕎麦を食った。
「ギャッ。」
僕が叫んだ。
「どうしたん?」
とユーコ。
「カメラの電池が上がってる。」
僕はカメラ中毒、写真中毒。どうもカメラがないと落ち着かないのだ。それで、今回は貴船の写真は無し。
貴船神社の石段を上がる。お社の前では、今神前結婚を終えたカップルが写真を撮っていた。結婚式というのはいつ見ても微笑ましいもの。ふたりで貴船川の谷を見下ろす展望台のような場所に座って、昨年から一年間、ふたりに起こった色々な出来事について話す。
ボチボチ行こうかということになり、石段を降りだす。ユーコが顔をしかめる。
「そうなんよね、筋肉痛のときは登りよりも降りる時が辛いねん。」
と僕。彼女の手を引いてゆっくりと降りる。
「なんか、おかん(母親)と一緒にいるみたい。」
と言うと、ユーコが膨れている。
貴船の次に行った、今宮神社、「あぶり餅」の前で。