細見美術館

 

「わらいとこわい」と題された今回の展覧会。妖怪がお出迎えをしている・

 

楽しみにしていたメイン・イヴェントの修学院離宮も終わり、三週間の日本滞在も、残すところ二日になった。お金も沢山使い、ボチボチ懐具合も心細くなってきた。残りの日々は、旅行記の執筆と、ピアノの練習で費やそうと思っていた。金曜日、また天気が良い。僕は、三週間前の同窓会で、細見美術館の事務局長をやっておられる女性、Yさんから、

「今、面白い展示をやっているから、時間があったら見に来てね。」

と言われたのを思い出した。時間はある。それに、僕のこれまでの経験では、美術館、

Yさんに会いに来ました。」

と言えば、Yさんがおられても、おられなくても「顔パス」で入れてしまうのだ。しかも、場所は岡崎、自転車で走れば二十分、交通費も要らない。僕は、昼ご飯を食べて、十二時半ごろ家を出た。

午後一時に細見美術館に着いた。同美術館については、ウィキペディアの紹介に任せる。

「細見美術館は、京都市左京区岡崎にある日本の古美術を中心とした京都府の登録博物館。管理・運営は、公益財団法人細見美術財団。大阪府泉大津市で、毛織物で財を成した実業家・細見亮市(通称:細見良、号:古香庵、生年一九〇一から一九七八)とその長男・細見實(生年一九二二から二〇〇六)、三代細見良行(一九五四生まれ)の三代が収集した東洋古美術品を展示するために開設された美術館である。一九九四年に財団法人細見美術財団として認可され、美術館の開館は一九八八年であった。」

現在の展示は「春画と妖怪」について。どちらも僕に興味のあるテーマだ。

受付で、名刺を渡して、

「すみません、Yさんに会いたいですが、いてはりますか?」

と尋ねる。受付嬢は、電話をし、誰かに僕の名前を告げた後、

Yは只今、来客中です。とりあえず、展覧会をご覧になってお待ちください。」

と言って入場させてくれた。展示品は、主に江戸時代の木版画、浮世絵であった。たまに、肉筆のものもある。男と女が交わっている図、ゲゲゲの鬼太郎に出て来るような妖怪の図(もちろん、水木しげるさんが参考にしたのだろうが)、男女の交わりを妖怪が見ている絵などもあった。しばらくして、展示室にYさんが顔を出されて、少し話をする。

「展示品、なかなか面白い。気に入っているよ。」

「所蔵品の一部が、今度、パリの美術館で展示されるの。」

彼女は言った。残念だが、仕事を引退した今、パリに行くことはないだろう。本日の入場料を只にしてもらっただけではなく、招待券を二枚ももらった。修学院離宮に連れて行ってもらったMさんに進呈することにする。

 展示品だが、「春画」ということなので「陰毛」が描かれたものが多い。毛の絡まった、モヤモヤした感じが、木版画で、リアルに描かれていて、当時の絵師、彫り師、摺り師の技巧の高さを感じた。「陰毛」に一番感動したような・・・

 

磯田湖龍斎の作品。左半分のみ。右側の「陰毛」の部分が載せられなくてすみません。

 

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