お台場

 

英国でお世話になった皆さんに最後にご挨拶。そして、当然飲み会。

 

「僕はどこにいるんだろう。」

目を覚ました僕は一瞬考えた。そうそう、東京、田町のホテルだった。時計を見ると七時。日本へ帰って数日間は時差ボケで、変な時間に目が覚めていたが、昨夜は初めて八時間連続して眠った。前日、田町の駅で、WさんとAさんと別れ、ホテルに戻ったのが十一時頃だったと思う。外はもう明るいし、雨も降っていない。

「お台場へ行ってみよう。」

そう決断する。金沢行の新幹線は昼前。まだ十分に時間がある。僕は身支度をして、カメラを提げ、ホテルを出て歩き出す。

「お台場へいくには『ゆりかもめ』に乗ればいい。」

Aさんがそう言っていたことを思い出す。それでスマホの地図を頼りに、「芝浦埠頭」の駅まで行く。そこから地上十メートルくらいの高架を走る「ゆりかもめ」に乗る。運転手のいない、空気の入ったタイヤで走る電車だ。お台場へ行くには、「レインボーブリッジ」を渡らねばならない。橋げたが高いため、電車は高度を上げるために大きくループして高度を上げていく。橋は二階建てで、一階は真ん中に列車、両側に自動車道路、二階は高速道路になっている。レインボーブリッジは一九九三年に完成した、芝浦とお台場を結ぶ橋。白い橋だが、夜間は虹色にライトアップされるという。夜の風景も見てみたかった。昔の映画で、トレンチコートを着た織田裕二が、この橋の上を走っていたシーンを思い出す。

「お台場」駅で降りる。土曜日の午前七時半、駅の周りは閑散としている。レインボーブリッジを望むテラスに立つ。対岸も、こちら側の岸も、高層建築が立ち並んでいる。一瞬、ロンドンのドックランド地区にいるのではないかと錯覚する。ちょっと変わった形の現代建築、自動運転の鉄道、ウォーターフロントであること。よく似ている。

「げげっ、どうして、ここにこれがあるの?!」

驚いたのは、お台場の海岸に、「自由の女神」が立っていたこと。ニューヨークにあるもののミニチュア。女神の前で会った英国人の夫婦と一緒に、呆れていた。砂浜があり、何かイベントの準備をしている。後で知ったのだが、翌日の日曜日にそこでトライアスロンの日本選手権が行われた。

石垣で囲まれた正方形の第三台場に行ってみる。台場とは、江戸時代の末期、ペリーが最初に来日した後、黒船を攻撃するために造られた人工島で、全部で六つあったという。それほど深くないとは言え、海のど真ん中に人工島を六つも造るのは、膨大な金と労力のかかる大工事であったことが予想される。そして、その投資の効果は・・・何もなかったということか。その後、江戸幕府はあっさり開国しちゃったもんね。

さて、何故僕が、お台場に近い、港区に宿泊していたかというと、僕が九月まで働いていた会社の本社が田町にあるから。昨夜は、英国での元上司であり、その後本社に戻られたおWさんとAさんに退社の挨拶とお礼を言って、その後三人で、結構盛大に飲んでいたのであった。

 

何故か釈然としない自由の女神の存在。真似ではなく何かオリジナルなものが欲しいよね。

 

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