サプライズ
お台場海浜公園にて。土曜日の早朝で誰もおらず、写真を撮ってもらう人を見つけるのに苦労。
Wさん:「モトさん、東京には何の用事で来られたんですか?」
僕:「Wさんにお会いして、お礼を言うためです。」
Wさん:「えっ、それだけのために、わざわざ?」
僕:「そうです。」
前日Wさんとの間にそんな会話があり、Wさんは感激しておられて、とても嬉しそうだった。そのせいか、結構良いピッチで飲んでおられ、僕も、着た甲斐があったと思った。
先にも書いたが、英国での最後の出社日は、九月二十八日であった。その日もいつものように午前七時に出社する。さすがに最後の日は余りやることがない。会社では、辞める人がいると、最後の日に、プレゼンテーションがあった。社員が集まり、記念品とカードが渡され、本人とその上司が短いスピーチをするのが通常。僕も、自分のプレゼンテーションがあると思っていた。しかし、三時になっても誰も何も言ってこない。
「忘れられているのかな。」
とも思ったが、こちらから催促することでもないし。
「もう帰ろう」
っと、ラップトップパソコンの電源を切り、キーボードや、ヘッドフォンを外し始める。最後に帰るとき、会社の携帯やラップトップは、情報システム部に返却にいかないといけないし。ふと顔を上げると周囲の様子が何か変。僕のデスクの周辺に人が集まり始めた。そのとき、上司のマークが立ち上がり、
「ではこれからモトのお別れのプレゼンテーションを行います。」
と言った。周囲には、社員のほぼ全員、社長や重役までが顔をそろえている。マークの短いスピーチがあって、その後記念品とカードを貰った。そして僕がスピーチをする。スピーチはこんなこともあろうかと、前日から考え、妻の前で予行演習をしていたので、スムーズにいった。お別れカードを手渡してくれたのは、何と社長だった。実は僕は社長と、何と三日前に初めて個人的に話した。僕の他にもう二人、九月末で欧州社を去る人がいたので、三日前に、三人の送別会が、イタリアレストランで行われた。その会が始まるとき、社長が、
「モトさん、今日は僕の横に座ってくださいよ。」
と言い出し、僕はそのとき初めて社長と話した。辞める三日前に、社長と仲良くなってどうするのよ。ともかく、欧州社のメンバーには、お別れと、お礼を言う機会があった。しかし、かつて世話になった上司で、もう日本本社へ帰ってしまわれた方々にも挨拶したい。それで、今回東京へ来たわけだ。
東京で、かつての上司のお二人と話をして、つくづく、日本の社員は、過酷な労働を強いられていると思った。おふたりとも、ほぼ連日の残業、接待、そして通勤時間片道一時間半。人間として、そんな生活が続けていけるのが不思議になってくる。おふたりのご健康を祈りたい。
レインボーブリッジは橋げたが高いので、車も電車も、グルリと回りながら高度を上げていく。