三人娘
例によってボケとツッコミを演じる幼馴染のふたり。
勤労感謝の翌日、「烏丸高辻」で待ち合わせたイズミ、ヨーコ、ヨリコと僕は、イズミの馴染みの店へ一緒に食事に行った。京都の町家を改造した「和風のフランス料理」の店。その日はヨーコの誕生日。それで、最初に彼女に小さなプレゼントを進呈する。
彼女たちも、会うのは久しぶりらしく、会話が弾んでいる。僕も含めて全員が、高校のとき陸上部だった。彼女達たちの会話を聞いていて思ったのだが、会話の中での各々の役割が、高校のときから全然変わっていない。ボケ役とツッコミ役、それにコメントを加える役、三人が昔通りの役割を演じつつ、会話が進んで行く。何歳になっても、何年経っても、三人の役柄が変わらないのが面白い。
僕が、
「数日前まで、独りで金沢の妻の実家に泊まってた。」
と言うと、
「信じられへん。」
という皆の反応。三人のご主人、あるいは元ご主人は、独りで奥さんの里に泊まりに行ったりは「絶対に」しないという。
「ケベ、おかしいんとちゃう。」
と言われても困る。僕はそれがごく当然で、皆そうだと思って行動していたのだ。実際妻の実家では待遇が良くて、居心地が良い。朝から刺身が出たりして。
次にまた、
「信じられへん。おかしいんとちゃう。」
と皆に言われたこと。それは僕が妻とピアノの連弾をしていると言ったとき。
「この世のものと思われへん、浮世離れした夫婦や、あんたたちは。」
とイズミが言った。
「連弾ってくっついてやるんやろ。」
「当然。」
「うちなんか、亭主が三十センチ以内に近付いたら『さぶいぼ』が出る。(鳥肌が立つという意味)」
という誰かの過激な発言まで飛び出した。
その後、僕の作ったリンゴジャムの話になった。
「ケベの家の庭、広いの?」
と聞かれる。
「ううん、それほどでも。テニスコートくらいの広さしかない。」
と答える。
「あんた、日本でそんなこと言うたら、殺されるえ。」
とヨリコがちょっとドスの効いた声で言った。まずい、殺されたくはない。
家の近くの今宮神社の横にあるあぶり餅屋。一軒は創業千年というから恐れ入る。