灰は灰色
実の奥さんにまで「似てない」と言われてしまった西郷隆盛像。
高知と言えば「坂本龍馬」。鹿児島と言えば、「西郷隆盛」そして「桜島」。この二大スターを抜きには語れない。(今年は大河ドラマの影響で、それに「篤姫」が加わっているらしいが。)僕たちも、せっかく鹿児島まで来たからには、「西郷さん」と「桜島」にはご挨拶をしておかねばならない。鹿児島での三日目は、帰りの新幹線の時間まで、午前中循環バスで鹿児島市内観光をすることにした。
ホテルをチェックアウトして、荷物をコインロッカーに入れた後、駅のバスターミナルから、市内観光用の循環バスに乗る。今日は昨日とは打って変わり、雲が多くて風が強い。
鹿児島市内には路面電車が走っている。なかなかレトロな雰囲気で良い。路面電車の軌道に沿って、芝生が植えられているのも優しい感じがして好ましい。
西郷隆盛の銅像の前で最初に下車する。循環バスは三十分間隔で走っているので、三十分で観光をして、またバス停に居れば、次のバスが拾ってくれるのだ。西郷さんの銅像の前で記念写真を撮ろうとするが、カメラの調子が悪い。昨日、「砂蒸し温泉」でカメラの中に小さな砂が入ったらしい。
ある小説で読んだが、西郷は写真を撮られるのが嫌いで、生前の写真は一枚もないとのこと。では何を基にして、東京の上野公園の銅像や、鹿児島のこの銅像が作られたのであろうか。実は、彼の弟の西郷従道がモデルになっているという。しかし、西郷の妻は、東京の銅像が完成したとき、
「夫の顔はこんな顔ではない。」
と言ったそうだ。西郷の顔は、鹿児島中央駅の表示板にまで書かれている。まさに「鹿児島の顔」である。
鹿児島には所々街路樹にヤシの木が植えられ、南国という雰囲気を醸し出している。ロサンゼルスに行ったときも、道路の両側にずらりと並んだヤシの木を見て、
「ここは暖かい場所なんだ。」
と感心したものだ。
今日は桜島から灰が飛んでくる風向きのようで、道路や、店の前で、灰の掃除をしている人が多い。車をスタートさせる前に、車に薄く積もった灰をブラシで落としている人を何人も見た。火山灰と言うと、何となく「褐色」というイメージがあったが、桜島の灰はまさに「灰色」、濃いグレーだ。灰は集めた後、特別な処理をされるらしく、灰のためだけのゴミ置き場があり、そこに黄色い袋に詰められた灰が集められていた。
西郷隆盛の銅像の前からバスに乗り、次に城山へ向かう。城山は、西南戦争の最後の激戦地で、西郷が自決した場所でもある。城山へ登る途中、西郷が潜んでいた洞窟が見える。
「この洞窟の横にある土産物屋の亭主が西郷の大ファンで、隣に本物よりももっと立派な洞窟を掘ってしまいました。それを、『本物』と思う人が多いのでご注意申し上げます。」
運転手のそんな案内に、バスの中で笑いが起こった。
桜島の灰は専用の灰置き場に専用の袋に入れて捨てられていた。