ジャム
採れすぎて採れすぎて何とかしてちょうだい状態のリンゴ。今週もまたこんなに。
ヒースロー空港で預けた荷物の中に、十三本のリンゴジャムのビンが入っていた。割れないように、新聞紙で念入りにくるんで。ジャムは妻と僕が庭で採れたリンゴで作ったもの、これを日本の友人や親戚の土産にしようと言うわけ。
「何とも『元手要らず』の土産で、すみません。その分手間はかかってますので。」
庭に四本のリンゴの木があるが、今年は豊作だった。九月の初旬から、週末の度に収穫した。梯子を架けたり、物置小屋の屋根に上ったりして取ったが、高いところには手が出ない。半分ぐらいは落ちて、腐ってしまうか、鳥や、キツネ、リスに食べられてしまった。リンゴは英語で言うところの「クッキングアップル」。酸っぱくて、生では食べられない。しかし、ジャムにするか、ムースにするか、パイやケーキに入れると結構美味い。
結局、五百個くらいのリンゴが採れた。丸くて大きなやつは隣人に配り、残ったリンゴでジャムとアップルソースを作った。ジャムは二キロずつ大鍋で炊く。砂糖を入れて、ドロドロになったら、少しバターを入れて「コク」を付ける。そして、取っておいたマヨネーズのビンなどに入れ、熱いうちに蓋をして、逆さにしておく。こうすると密閉されて、常温で保存できるのだ。
一番面倒な作業は皮を剥くこと。丸くて大きなリンゴは隣人に配っている。残ったリンゴは、小さかったり、いびつな形をしていたり、虫が食っていたり。要するに剥きにくいのだ。一時間近く台所に立って、ずっとリンゴを剥いていると、腰が痛くなってくる。
今年は、ジャムを日本に持って行くというので、「シャレ」でビンのラベルを作った。「Moto & Mayumi’s Apple Jam」という似顔絵入りのラベルを印刷して、ビンに貼り付けた。ラベルの貼ったビンが台所に並んでいるのを見た息子が、
「パパとママはこれを売りに行くの」
と聞いた。
ともかく、全部で十三本のジャムは、日本に着いて親戚や友達と会うたびに手渡され、遠くの人々には宅急便で送られた。さて、評判はどうだったのだろう。少なくともヨーコからは、
「ホント、良く考えたら、給食であのビニール袋に入ったまず〜いジャムを食べて以来、自らすすんでジャムを買うことはなかった気がします。こんな美味しいジャムにめぐり会えて嬉しいです。」
との礼状が来た。もちろん、社交辞令も半分だろうが。実際、僕はパンを殆ど食べないし、食べてもジャムは塗らない。自分の作ったジャムを他と比較しようがないのだ。
生母がパンを焼いた。朝食後、小麦粉にイーストを入れて一所懸命にこねている。昼過ぎに帰ると、パンを焼く匂いが家の中に立ちこめている。
「なかなかいけるやん。」
焼きたてのホコホコと暖かいパンに塗ったジャムは、確かに美味かった。
母の焼いたパンとリンゴジャムと紅茶を入れるピーターラビットのマグカップ。