日本のお土産
三月上旬、ロンドンはまだまだ寒いが、クロッカスが咲き始める頃。
三月八日、風は強いし気温は低いが雨は降っていない。七時過ぎに散歩に出かける。東に向いて歩き、鴨川まで行く。昔、鴨川でジョギングをしていたせいだろうか。条件反射的にそちらへ向かって歩いてしまう。雲の切れ間に日が射し始しはじめ、その下でシラサギが餌をついばんでいる。
生母の家での朝食。歩いた後だが、その時間は何故か食欲がない。飯を何とか飯を腹に収めた後、またしばらく横になる。
九時、鞍馬口の生母の家から父の家に移動する、父と継母の食事は終り、母はプールともう一件の家の世話に行くため、九時半ごろに自転車で出て行った。
「八十近くになってまだ自転車、大丈夫?」
と心配するのだが、膝が痛い母にとっては、自転車が一番楽な交通手段だという。
「お母さん、こけんといて下さいね。」
と言って、母を送り出す。
その日は夕方まで父と一緒に過ごす。食堂か居間か玄関のベッドで父は新聞か本を読んでいる。時々疲れると、ベッドの横のソファに座り、目を閉じている。僕はその横で、コンピューターで旅行記を書いている。父と僕は三十分に一度くらい、ボソボソと話す。それだけ。父はもともと感情を余り表に出さない人だ。しかし、永年の付き合いで、今の状態に父が満足しているのは、何となく分かる。あまり無理にペチャクチャ喋りかけるのも不自然だし。
しばらくして、宅配便のお兄ちゃんが来て荷物を置いていった。開けるとソロバンが五本、真由美が注文したものだ。マユミはロンドンで子供たちにソロバンの手ほどきをしているのだ。沢山のソロバンが必要ということは、沢山の子供がソロバンを習いたいということ、結構なことだ。そんな結構な物なら、多少重い目をしても運ばねばなるまい。
「お土産何がいい?」
と父と生母に聞かれて、京漬物をリクエストしている。僕もマユミも子供たちも漬物が好き。真ん中のミドリなんて、飯なしで、漬物を一袋食べてしまう。
「ちょっと〜、ミンちゃん、塩分の取りすぎは身体に悪いんやで。」
漬物、プラス今回は、金沢のマユミの実家から、冷凍した辛子明太子をもらっている。それにソロバン六本と教習所数冊が加わり・・・荷物がどんどん増え、制限の三十キロ以下にできるか、ちょっと心配になってくる。
お昼になり、父は継母の用意していった、何と「スパゲティーのミートソース」を食べている。それだけ食事が入れば、まだまだ大丈夫。ちなみに僕は一日二食の原則を、日本滞在中貫いた。でも全然体重は減らないんだよな。
その後、僕はソロバンの代金を振り込みに郵便局へ行った。ATMでの振り込みを試してみたが、メチャ複雑で一苦労。こんなの爺さん婆さんにはとても無理。
森鴎外の高瀬舟で有名な高瀬川。伏見と京都の水運に使われた。