シャル・ウィ・ダンス
王様がアンナの腰に手を当てる。「これでいいのか」、「ええ」
このミュージカルは実話に基づいて作られている。登場する王様のモデルは「ラーマ四世」(在位一八五一年から六八年)、元々はモンクットという名前であった。彼は、タイの近代化に寄与した人で、子供たちや妻を西洋の習慣に慣れ親しませるために、イギリス人のガヴァネス、つまり家庭教師を雇う。それに応じてやってきたのが、アンナ・リオノウンスであった。彼女は軍人の妻だったが、夫と死別していた。後年、彼女を主人公にした「アンナとシャム王」という本が出版される。その本を基に、作曲家のリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン二世が作り上げたのがこのミュージカルである。ラーマ四世は、十九世紀の半ば、周囲のアジアの国々が次々と植民地になってしまう中、日本と同じように独立を守り抜いた名君、名政治家であった。また、彼の息子、チュラロンコン、後のラーマ五世も名君であったとのこと。劇中では「態度のでかい皇太子」として登場するが。
「仕事をしていても、歩いていても、『シャル・ウィ・ダンス』の歌を唄ってるんだよね。」
ミュージカルを見た翌々日の日曜日、上の娘のミドリに会ったとき、彼女がそう言った。実は僕も同じだった。気が付けば「シャル・ウィ・ダンス」を口ずさんでいた。「王様と私」の中で歌われる曲は、だいたい知っている。もう三回も見たし、娘のスミレが、パーティーのときなど、ヴァレンティンの伴奏でよく歌っていたから。しかし、何と言っても、「シャル・ウィ・ダンス」が最も良く唄われ、最も好かれている曲ではないだろうか。アナが王にダンスを教えるときに唄われる曲である。
We've just
been introduced
I do not
know you well
But when
the music started
Something
drew me to your side
So many men
and girls
Are in each
other's arms
It made me
think we might be
Similarly
occupied
今は亡き越路吹雪さんが唄っていた日本語の歌詞は以下のようになる。
「初めて会うふたりだけど
やがて音楽が始まったら
私たち皆のように
抱き合いながら踊りましょう」
踊っておられるシーン、おふたりとも、大変楽しそうでした。後はもちろんスタンディングオベーション。