どういたしまして、馬鹿野郎
ポロスの町。山が迫っている。きれいな海岸だが、誰も泳いでない。
到着した翌日、外の出てみる。日差しがきつい。六月、ギリシアでは、正午頃になると、太陽はほぼ真上から照り付ける。サングラスなしでは外に出られない。英国では、ちょっと天気が良いと、道行く人がほとんどサングラスをしている。日本では余り見かけない光景。欧米人は目の色が薄いので、光を余計に眩しく感じるという説もある。タモリさんには悪いが、日本人は鼻が低いせいか、あまりサングラスが似合わないと思う。僕も、普段は、自転車に乗るとき以外はサングラスなんてかけない。しかし、夏のギリシアでは必要だ。
空気はあくまで乾燥している。蚊がいない。乾燥しすぎて、蚊も住めないのかな。同じ三十度でも、シンガポールの、湿度の高い、圧迫感のある暑さとは全然感じ方が違う。
朝食も、海を見下ろすテラスで取った。今回のパッケージ・ホリデーでは、朝食と夕食が含まれている。日本でいうバイキング、バフェット形式である。「ヨーデル食べ放題」ではないが、飲み物は別料金〜。(誰も知らないよね。)朝食にフルーツをどっさりと食べた。
「トマトが甘い!」
最近英国で買うトマトは全然甘くない。僕の子供の頃、京都の家の近くに、上賀茂の農家のおぼさんが、大八車で野菜を売りに来た。あのトマトは甘かったなあ。それを思い出す。夏のおやつはいつもトマト一個。大きなトマトを、顔を汁だらけにして食べた記憶がある。
レンタカーを借りる手続きをする。車が届けられるのは夕方。それで、昼前に、ホテルのマイクロバスで、ポロスという隣町まで送ってもらう。ケファロニアはギリシアの島の中でも、結構山がちで、緑が多い。ポロスの街も、裏まで山が迫っている。町はずれの海岸で泳ぐ。翡翠色の海の色。透明度はバツグン。何より良いのは、泳いでいるのは僕たち家族だけ。独占状態ということ。魚がいる。小鯛のようだが、グレーでしっぽのところだけが黒い。魚と一緒に泳ぐのは最高。ケファロニアの魅力は、一にも二にも「海」。どこでも泳げて、水がきれいで、誰も居ない。
これまで、ギリシアの各地で休暇を過ごした。コーフ、ミコノス、サントリーニ、ロドス、クレタ、ハリキディキなど。それぞれに特徴があり、どこも美しかった。一時、かなり真剣にギリシア語を勉強したことがある。だから、一応ギリシア文字は発音できる。大部分は忘れてしまっていたが、少しずつ思い出す。先ず使い始めたのが、次の三つの言葉。「エフカリスト」(ありがとう)「カリメラ」(こんにちは)「パラカロー」(どういたしまして、または、どうぞ)。この言葉を覚えるとき、は似た日本語と絡めて覚えた。「エフカリスト」は「エクソシスト」。「カリメラ」は「カラマリ」。そして、「パラカロー」は「馬鹿野郎」って。ところが、日本語のキーのほうが強すぎて、「ありがとう」と言われたときに、
「バッキャロー!」
と言ってしまった。相手の方が日本語を知らなかったので、事なきを得たが。
夕方にレンタカーが配達される。フィアットパンダ。朝食べたトマトと同じ色!
車を停めたら、どこでも泳げて、しかも、どこもプライベートビーチ状態。それがケファロニアの魅力。