餃子が食べたい

 

 

松江城天守閣の上は、宍道湖から吹き渡る風で別世界。

 

 松江のホテルで、夕食の時間になった。

「なんか、餃子が食べたいな。」

と僕は思う。松江の郷土料理なんかもあるだろうが、何故か急に餃子が食べたくなったのだ。

 旅をしていて困るのが、知らない土地で、どこで食事をとるか決めること。昼間観光をしているときに、できるだけ目星を付けておくのだが、僕の泊っているホテルの周囲は、市役所や県庁があるオフィス街で、食べ物屋を見つけることができないでいた。

 インターネットで調べると、バスで十五分ほど行った黒田町というところに、「王将」がある。「餃子と言えば王将」僕は、そこに行くことにした。金沢など、中小の町でバスに乗ろうとして困るのが、バスの本数の少ないことである。松江も同じで、バスは四十五分に一本とか、一時間に一本とか。時間を調べてからバス停に行かないと、暑い中、ずっと待つハメになってしまう。

 ともかく、午後六時過ぎ、バスの時間を調べて、ホテルの前からバスに乗って、「黒田町」で降りて、僕は「王将」に入った。五十席くらいある、結構大きな店だが、従業員は三人だけ。時間が早いせいか、まだガラガラ。

「まず生中。それから餃子と酢豚とご飯セットね。」

注文は従業員にするのだが、食事を持ってくるのはロボット。お気楽な音楽を鳴らしながら、滑るようにやってくる。僕の前まで来ると、クルリと向きを変えて、お盆を僕の前に差し出した。食事をお盆ごと受け取り食べ始める。今回日本に来て、ちょっと大きめの店に行くと、注文は携帯のアプリか、タッチパネルですることが多かった。でも、ロボットのウェイターは初めてだった。餃子は懐かしい味。

 翌朝、朝食をとりに、ホテルのレストランに行く。レストランは最上階、朝日を浴びた宍道湖が美しい。

「今日はどうしようかな。」

と考える。長崎、津和野、松江と、「不要不急の外出を控えてください」と警告される中、かなり歩き回って、正直、少し疲れていた。寝る場所が変わったせいか、夜もあまり眠れていないし。この時期、日本に来ている外国人の旅行者の皆さんが、連日元気に歩き回っておられることが、ちょっと信じられない。

「京都に帰ろうっと。」

松江城も、宍道湖も見たし。僕は、朝食の後、まっすぐ京都に帰ることにした。チェックアウトを済ませ、バスで松江駅に向かう。駅に着くと、ちょうど十分後に発車する岡山行の特急「やくも」があった。指定席の切符を買って、それに乗る。

 列車は「伯耆大山」駅を通るが、曇っていて大山は見えなかった。列車は米子から中国山地に入り、山を越えて岡山へ。僕はずっと眠っていた。

 

 

今年から走り出した新型電車「やくも」で、岡山に向かう。新しい列車に乗るのも「鉄オタ」には嬉しい。

 

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