鉄道絶景スポット
山陰本線、益田―浜田間は、日本海が線路に寄り添う。
翌日は、津和野から松江に向かう。列車が出るのが十時。それまで、もう一度津和野の旧市街を回る。とにかく、端から端まで五百メートルくらいしかないので、コンパクトで歩きやすい。百年前にタイムスリップしたような街並み。道端の掘割には、色とりどりの鯉が泳いでいる。
十時前に駅に着く。待合室はよく冷房が効いており、自習コーナーがあり、列車を待つ中学生や高校生が勉強できるようになっている。駅ピアノもある。バッハを弾いてみる。駅前には蒸気機関車が展示されている。この辺りは、観光シーズンに、蒸気機関車が走る線区でもある。
十時になって、僕が昨日乗って来た、「スーパーおき」米子行きが到着。ホームに立っていたのも、列車に乗ったのも、何と僕ひとりだった。
「今って、夏休みの観光シーズンやないの?」
列車は川に沿って進み、一時間ほどして、益田駅に到着。そこから、山陰本線に入る。ここからの景色が素晴らしい。
「おそらく日本で一二を争う、鉄道絶景スポットかも。」
僕は思った。列車は、左側に広がる日本海に沿って走る。青い海に、風が強いせいか、白い波が立っている。そんな車窓からの景色が二時間くらい楽しめる。時々短いトンネルがあり、駅で対向列車とすれ違う。島根県は横にベタッと長い。津和野も松江も島根県だが、端から端までなので、特急で四時間近くかかる。その特急も、朝夕二本しか走っていない。
途中出雲市に停まったので降りてみる。ついでだから、「縁結びの神様、出雲大社」に行ってみようかと思ったのだ。しかし、駅から大社までバスでも、電車でも三十分かかる上、本数も少ない。僕は、出雲大社を諦め、次の特急で松江に向かった。出雲市から先は電化されており、特急「やくも」が一時間に一本走っている。乗ったのは、今年の春に導入された新型車両。間もなく、左側に宍道湖が現れ、列車は湖に沿って三十分くらい走った後、一時ごろに松江に着いた。県庁所在地、結構大きな町である。
駅前からバスに十五分ほど乗り、宍道湖畔のホテルへ。そこから歩いて松江城に向かう。津和野ほど気温は高くなく、曇り空。しかし、湿度が高く、歩いていると汗が滴り落ちる。松江には、津和野と違って、外国人旅行者が多く来ていた。松江城の天守閣に登っていた人の半分くらいは外国人だったかも。
「一度来てみたかったんだよな、松江城。」
端麗なお城である。
天守閣のてっぺんに辿り着くと、Tシャツを脱いだらジャーッて絞れるくらい汗だくだった。しかし、最上階は別世界。宍道湖からの涼しい風が吹き渡る。気持ちが良い。僕は三十分くらいそこにいた。
端麗な松江城。天守閣は国宝である。